伝えられぬ想い


「艦長!どういう事ですか!」
「バジルール少尉・・・これは・・・」
まただ。ナタルがマリューの判断に反論している。
「はぁ・・・・・。」
ナタルが去った後、マリューのため息が室内に響いた。
「よっ、大丈夫か?」
セクハラ大魔人フラガが現れて、マリューの肩に触れた。
「・・・・大尉、セクハラです。」
「え?そうかなぁ。」


「はぁ・・・・・。」
その頃、ナタルもため息をついていた。
(あぁ・・・・どうして私は素直になれないのだろう。)
こんなに艦長の事が愛しいのに、伝えられないこの想い。
艦長の判断だって全く合っていないとは思っていない。ただ互いの思う正義に微妙なずれがあるだけだ。

そして、双方の気持ちが晴れないまま、1日が過ぎた。
(謝るなら、今日しかない・・・・・。)
ナタルは、扉の前に立っていた。
扉の向こうには艦長がいる。
勇気を出して扉を叩こうとした、その時。
「よっ、どうしたの?」
セクハラ大魔人フラガが現れナタルの背中に触った。
・・・・・。
「大尉!セクハラはやめてください!!!!!」
ドスッ。
「ぐはぁっ!」
ナタルの一撃がキレイに入った。
カチャ・・・・・。
ナタルの声に気付いたマリューが扉を開けた。
「か、艦長・・・・。」
「どうかしたの?」
「い、いえ別に。」
艦長を目の前にして、ナタルは恥ずかしくなり去っていった。
「あっ、バジルール少尉。」
小走りに去っていくナタルを不思議に思いながら,フラガに向き直った。
「女性に陰湿な行為を行うのはお止めください。」
「何を言うんだ、俺がそんな事をするやつだと思っているのか?」
「えぇ、とても。」
「・・・・ひどいなぁ。将来嫁にもらってあげてもかまわないと思ってたのに。」
そう言ってマリューの腰辺りに腕をのばした。
ピキッ
「丁重にお断り致します!!!!」
バンッ
勢いよく扉を閉め、フラガの手が挟まった。
「あうぅっ・・・・!や、やだな〜。今日はエイプリル・フールじゃないか。」
「・・・・タチの悪い冗談は止めてください。」
そのままマリューは部屋を出て行った。
「エイプリル・フールか・・・。」


「ミリアリア、今日も可愛いよv」
マリューが声のする方に目を向けると、トールとミリアリアがイチャついていた。
「トールは今日も地味ねv」
ガ〜〜〜〜〜〜〜ン
ギャラリーは、長く続いたバカップルもこれで終わりか、と思った。
「もう、トールったら本気にしないでよ。今日はエイプリル・フールなんだから。」
「え・・・・?あっ。あぁ本当に良かった〜。」
ギャラリーは、でも地味だというのは本当の事だ、と思った。
「でもトールって本当に地味よね。」
皆遠慮して黙っていたのに、フレイがグサッと突っ込んだ。
グサッ。
「そんなに地味かな・・・?」
「そ、そんな事無いよ。トールが役割を果たしてくれているお陰で、僕も安心して戦えるんだし。」
キラがフォローを入れた。
(大変ね、キラ君も・・・・。)
マリューはその場を立ち去った。


(今日はなんだかエイプリル・フールのせいで騒がしかったわね・・・。)
夜になって、マリューはため息をついていた。
コンコン。
「誰・・・・?」
こんな時間に。
カチャッ。
「バジルール少尉・・・・?何か?」
「あ、あの・・・・。艦長、昨日は・・・すみませんでした。」
「あぁ、その事。もう別にいいのよ。」
マリューはナタルがそれを気にかけていたと知って、少し安堵した。
(・・・・言いたい。)
ナタルは、伝えられないでいる。マリューへの想いを。
この純粋な憧れを伝えたかった。
「バジルール少尉・・・・?」
「・・・・・・好きです。」
「え・・・・?」
ナタルはハッとした。
「エ・・・・エイプリル・フールですっ!」
ナタルは顔を真っ赤にして走り去っていった。
「・・・・・?」


バンッ。
自室に走りこんだナタルの心臓の音は激しかった。
(言ってしまった。艦長に。)
エイプリル・フールのせいにしたけれど。
ナタルが走り去ってからマリューが時計を見ると、2日の午前0時を、とっくにまわっていた。





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