僕の居場所はまだありますか? 君の近くに存在しますか?
―――裏切りは永遠の別れ。 そんな言葉が頭を掠めた。 たくさんの人と戦った。 たくさんの―――人を、殺した。 それなのに。 アスランは変わらず僕を呼び続けて、受け入れてくれようとする。 「嬉しかったよ。…本当に、嬉しかったんだ。」 もう、この言葉は届かないけど。 昔と変わらずに僕を呼ぶその声が、言葉が、どれだけ救いになったことか。 「…だけどもう、戻れない。」 裏切りと言われても仕方がない。皆を守れるのならそれでよかった。 幸せだった過去を呪ったりしない。 置かれた境遇を憎んだりもしない。 苦しいけれど。 「……それが、僕の決断。」 君のコトは一生忘れない。 思い出を支えに、生きてゆくから。 「ごめん、アスラン。―――許してくれなくても、構わない。」 アスランの想い。 そして応えることの出来ない自分。 二度と二人の想いが交わることはないのだろう。 「トリィ?」 頬をつたう涙がシーツへと零れ落ちたとき、トリィが心配そうに鳴いた。 くすっ、っと。その様子に思わず笑みがこぼれる。 「アスラン……」 こんな時の対応の仕方、トリィはまるでキミみたいだ。 ボクが泣いている時、キミはいつも戸惑ったようにキラ?≠ニボクの名を呼ぶ。 泣きたい時、キミはいつも傍にいてくれたのに。 「……ッ!」 溢れる涙に唇をかみしめる。 もう戻れない時。 もう戻れない場所。 二度と戻らないものに、馳せる想い。 「……君が好き、だった。」 静かな……声。 だけど。 込められた思いはどれほどのものだったのか。 愛しさや優しさ。切なさ、悲しみ。 とにかくあらゆる感情をその言葉に託した。 「バイバイ。アスラン。」 小さく微笑んで、目を閉じる。 次に目覚めた時にはまた、戦いが待っていた。 |