「影はウソをつかない、」か?
アメリカFoxテレビが「アポロ宇宙船は本当に月に着陸したのか」という番組を放送して以来、後追い番組が次々と放送され、模倣サイトが次々と登場 した。これらのトンデモ番組、トンデモサイトはNASAが提供する写真の「おかしさ」を数多く指摘した。これらは捏造写真である、本当はアポロ宇宙船は月 に行っていない、と主張しつづけている。
1.アメリカ国旗や月着陸船の影があるのに、宇宙飛行士の影がないのはおかしい、飛 行士のはめ込み合成写真だと主張されている。
光の方向は三次元のベクトルで表される。この画面で最も大きい成分は画面左手から右手に向かう成分、次に画面奥から手前に向か う成分、次に上から下に向かう成分である。2.二人の飛行士の影の方向が違う。月に光源はふたつもない。捏造写真だ、と言われ ている。
この写真は二人の飛行士のかなり上方から撮られている。左手の飛行士の立ち姿を見るとそれがわかる。右手の飛行士は脚を曲げているが、それを考慮するとか なり左手の飛行士より大きい。二人はほぼ同一平面に立っているように錯覚しがちだが、実はかなりの急斜面ないし崖の上下に立っており、左手の飛行士の影は 斜面にあたって大幅に角度が変わっているのだ。この樹木の写真はNASAが人を惑わせる影の説明に使った写真
のひとつである。光源が二つなくても、人の目に映じる影の方向は変わりうる。この例では影が映っている地形のデータが明白なので奇異に思うことはないが、
地形の情報が得にくい、あるいは見なれた地形と違っている月表面では不審な影は頻出する。
4.手前の岩の影の方向と画面奥の月着陸船の影の方向が違う。よって捏造写真と言わ れている。
写真では月着陸船と岩とがあまり変わらない大きさに感じられるが、 実は着陸船はかなり大きい。つまり見た目よりも実は遠くにある。光の方向は画面奥から手前右に向かっている。ところが、遠くの物体は画面の奥行き方向の成 分が非常に短縮されて見える。望遠レンズで見たときの映像ではよく経験されることだ。実は着陸船の影も近くに寄ってみれば画面奥から手前右に向かっている のだが、あまりに遠いため、影の奥行き方向の成分がほとんどないように見え、右方向の成分だけが見えるのだ。「影がおかしいから、捏造写真」というウソを見破るための要件
1.光の方向を確かめること。
2.地形データを読むこと。
3.対象物との距離、対象物相互の高低差を読むこと。
4.もし、これらの情報が写真の内部にないときに軽率な判断を下してはならない。
アポロは月に行っていないと主張するひとたちの見付けた「捏造写真」は影の問題ばかりではない。一枚目の写真においてはアメリカ国旗が風になびいて
いるように見える。これは最も捏造の根拠として多く使われたネタとなった。ところが、NASAが科学的に説明しつくしても、あとからあとから、それへの反
論が出てくるという不思議な事態に直面することとなった。
まともな判断能力を持った人たちがこれらの人にした反駁のひとつを紹介する。この反駁は南京大虐殺否定派にそのまま通用する。
この説明はNASAのSpaceflight web pageからとったものです(訳注:
リンクは英語で書かれたページにジャンプします)。もちろん、疑念を持っている人は信じないでしょうね。なぜなら、それはNASAのサイトから引用したも
のですから。しかし、このサイトではなぜ、旗がそのようにみえたのかをちゃんと説明していますし、旗めいているビデオを見て困ってしまうでしょう。それ
に、もし、NASAの連中がでっち上げたセットの中で、旗が風で動いてしまったとしたら、なぜそのディレクターはもう一度撮ろうとしたと、思わないんで
しょう? うそを作り上げるお金で、フィルム代ぐらい十分まかなえるんですから。
http://moon.nasda.go.jp/ja/popular/story03/flag.html
捏造写真の主張の多くは基礎知識のない素人には反論ができないので簡単にウソの主張に巻き込まれてしまう。それらの素人 のは一部は本当にアポロは月に行っていなかったのだと信じ始め、「ソ連に負けまいとしてNASAが創作した」との動機まで完成する。NASAが科学的な解 説を駆使しても、NASAは捏造を悟られないように懸命の反論を行い始めたと思いこむ。こうなると説得は容易ではない。これらのことすべては南京大虐殺は なかったと信じるひとたちの反応に酷似している。