活動報告 2004

常滑のレンガ煙突の耐震性と改修法 (2004. 4.21)
駄知まちづくり委員会(岐阜県土岐市)との交流 (2004.1.25)


常滑のレンガ煙突の耐震性と改修法 (2004. 4.21)
 レンガ煙突の耐震性について研究をしている名古屋市立大学の青木先生に話を伺った。先生は、昨年度、豊和製陶所でレンガ煙突の強度試験を行っており、これを踏まえた話である。

1 煙突倒壊危険性の確認
 【結論】震度6強に耐えられる煙突があれば、震度4でも倒壊可能性のある煙突もある。
 豊和製陶所の煙突で、当初の報告で震度4程度の耐力とされたのは、静的な水平力を加えて倒壊する強度を算定したものであり、実際に常滑で採取した地震動を増幅して加えた結果、震度6強の地震動でも耐えることが判明した。この煙突は保存状態もよく、モルタルの引っ張り強度も当初予想した0.3N/mm2より大きく、約0.4N/mm2程度とわかった。ただし、この結果は小地震を増幅して得た地震波を用いており、東海・東南海地震のような巨大地震とは周波数特性も異なることが予想されるため、実際の地震で大丈夫との保証をするものではない。
 一方、岩田製陶の煙突は構造体基部でモルタルの状態が非常に悪く、豊和と比べすっと弱い水平力で倒壊することがわかった。
 可能であれば、東海・東南海地震の震源モデルからやきもの散歩道地区で想定される模擬地震動を作成し、これにより耐震性能を算定することが求められる。地震動が巨大化により長周期化することは一般に言われており、豊和製陶所の場合も煙突の固有周期に近づけば、震度6以前に倒壊する可能性もあり得る。

2 煙突の耐震改修法
 【結論】一般化されたレンガ煙突の耐震改修法は、現在のところ誕生していない。
 アングルによる四隅及びブレスによる補強は、煙突の堅さを増すことになり、水平力をまともに受けることにもなり得る。アングル補強が煙突の水平耐力アップにつながるとは言い切れない。未使用の煙突なら、煙道に鉄筋かごを挿入し、コンクリートを打設することにより、鉄筋コンクリート造の柱を新設することも可能だが、基部で地盤面以下に根入れをとることが難しく、また、根入れなしでは基部でポキッと折れてしまうことから、この方法も実用性に乏しい。
 科学的に費用、工法とも認められる耐震改修法は現在のところ見あたらない。

3 まちづくりに活かす方向
 煙突の安全性を増すことで、散歩道のイメージアップを図ることが可能である。そのため、耐震改修法を松、竹、梅のようなランク別に提案し、取り組んでもらえるところから取り組んでもらうような取り組みがいいのではないか。
 窯や工場自体の耐震性にも疑問があり、この辺りとの兼ね合いも要検討。とは言え、まずは煙突対策が散歩道にとって第1に取り組むべきことと考える。

補足情報
 常滑の煙突については、2分煙突と3分煙突とあり2分傾斜の煙突が災害で倒れたと聞いている。2分、3分とは、煙突の傾斜角度のことで、1尺の高さで、横方向に2分もしくは3分の傾斜を示す。したがって、3分傾斜のほうが緩やか。また、たくさんレンガを必要としたため、安く作ったところは2分煙突となっている。

駄知まちづくり委員会(岐阜県土岐市)との交流 (2004.1.25)
 東海地域のやきもの4産地で組織している、やきもの産地交流・連携推進協議会の活動が縁で、美濃焼産地のうちの一つ、土岐市駄知のまちづくり委員会から交流のお誘いを受け、メンバー5名で行ってきました。駄知へ行くのは初めて(というかその存在すら知らなかった)というメンバーが多かったので、どんぶり会館の立派さや最新の機器を備えた土岐市立陶磁器試験場・セラテクノ土岐の充実ぶりに驚き、民間の窯元が公開している印判館とすりばち館に感心し、常滑とは比較にならない産業規模を実感してきました。
 駄知では毎年11月に「どんぶりまつり」を開催して5年が経過したものの、18年の歴史を誇る常滑のやきもの散歩道フェスティバルの活動を参考に、新たな発展を期したいということで、様々な意見交換をしました。
 フェスティバルはけっして産業観光が目的ではなく、窯元として消費者の嗜好を探り接客態度を勉強する場、そして住民との交流を図る場として企画し開催してきたこと、タウンキーピングの会という外部の者や市役所職員なども含んだボーダレスな組織の役割と必要性、商売を目的としない市民を巻き込んだまちづくり活動の展開などの話をさせてもらいましたが、同時に、やきものづくりの技術を軸として活動を展開している様子に、常滑では散歩道に頼り過ぎて技術がおろそかになっていないか、といった反省の意も強くしてきたところです。