閑吟集 小歌

 
                       しんじつ
 人の心は知られずや 真実 心は知られずや
(255)

大意……

人の心はわからないものだ。
本当に、心とはわからないものではありませんか。


 



 単純な歌ですが、「や」を詠嘆と取るか、または疑問と取るか、はたまた反語と取るかで、意味は微妙に違って来るでしょう。「真実」は「ほんとうに」とか「まったく」という意味の副詞です。

 ただ、詠嘆にしろ疑問にしろ反語にしろ、「知られず(わからない)」と言う心の奥底には、人の心を知りたいという、強い願望が透けて見えます。わからないからこそ知ってみたいのが「人の心」なのでしょう。

 心変わりをしてしまった、別れたあの人の真実を、出来るものなら今知りたい。今、つきあってくれれているあの人は、こちらが思うのと同じほどに、自分を思ってくれているのだろうか。人の心なんて、他人には知りようがないのだけれど、それでもと足掻く心は、今も昔も変わりようがありません。


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