みどりの薔薇
ひびきのなかに住む薔薇よ
ひびきのなかにすむ薔薇よ、
おまへはほそぼそとわだかまるみどりの帯をしめて、
雪のやうにしろいおまへのかほを
うすい黄色ににほはせてゐるのです。
ふるへる幽霊をそれからそれへと生んでゆくおまへの肌は、
ひつぎ
ひとつのふるい柩のまどはしに似てゐるではありませんか。
ひびきのなかにすむふくらんだおほきな薔薇よ、
おまへは、あの水の底に鐘をならす魚の心ではないでせうか。
薔薇よ。
ようせい
ひびきのなかにうろこをおとす妖性の薔薇よ、
おまへはわたしのくちびるをよぶ、
わたしのくちびるをまじまじとよんで、
月のひかりをくらくするのです。
うすく黄色い薔薇の花よ、
ぷやぷやとはなびらをかむ羽のある蛇が
ぼゐん
いたづらな母韻の手にとつて、
あへいでゐるわたしのこころに
亡霊のゆくすゑをうたはせるのです。
ああ
しろばらよ しろばらよ しろばらよ、
おまへはみどりのおびをしめて、
うすきいろく うすあおく にほつてきました。
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