田舎を恐る
わたしは田舎をおそれる、
田舎の人氣のない水田の中にふるへて、
ほそながくのびる苗の列をおそれる。
くらい家屋の中に住むまづしい人間のむれをおそれる。
田舎のあぜみちに坐つてゐると、
おほなみのやうな土壌の重みが、わたしの心をくらくする、
土壌のくさつたにほひが私の皮膚をくろずませる、
冬枯れのさびしい自然が私の生活をくるしくする。
田舎の空氣は陰鬱で重くるしい、
田舎の手觸りはざらざらして氣もちがわるい、
わたしはときどき田舎を思ふと、
ヽ ヽ
きめのあらい動物の皮膚のにほひに悩まされる。
わたしは田舎をおそれる、
田舎は熱病のじろい夢である。
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