●『イギリス名詩選』平井正穂編 岩波文庫 pp.240-241 より引用
Pippa's Song Robert Browning The year's at the spring And day's at the morn; Morning's at seven; The hill-side's dew-pearled; The lark's on the wing; The snail's on the thorn; God's in his heaven --- All's right with the world! ピパの唄 ロバート・ブラウニング 歳はめぐり、春きたり、 日はめぐり、朝きたる。 今、朝の七時、 山辺に真珠の露煌く。 雲雀、青空を翔け、 蝸牛、棘の上を這う。 神、天にいまし給い、 地にはただ平和! Browning(1812-89)は、テニソンとともにヴィクトリア朝詩壇を代表する詩人で、 「劇的独白」(dramatic monologue)というテクニックを駆使して人間の魂の微妙な動 きを描いた。(中略) ここに揚げた短詩は、『ピパ過ぎゆく』(Pippa Passes, 1841) という劇詩の中で、罪を犯している男女の心をうつ、純真な少女ピパの唄である。上 田敏の名訳でわが国でも昔から有名。いつのまにか、この短詩は題名のように呼ばれ るようになった。