竹久夢二
竹久夢二は画家としての方が有名ですが、多くの詩も残しています。そうは言っても、わたしも長い間「宵待草」の作詞者としての夢二を、かろうじて認識しているだけでしたが。
ところで、夢二の詩を一つ一つ読んでいると、あちらこちらに北原白秋が顔を出しているような気がします。童謡的なものが多かったり、マザーグースの訳だとはっきりわかるものが幾つかあるのも、やはり白秋の影響でしょうか。そう思って読んでいくと、夢二の独創性はあるのかないのか、だんだんわからなくなってくるのですが、夢二の絵とよく似た、哀しいような憂うような雰囲気が、そこはかとなく立ちのぼって来る雰囲気というのは、やはり、夢二独特ものでしょう。
夢二自身は、自分の詩を「小唄」と称していたようです。七五調の口ずさみやすい詩形は、確かに、三味線に合わせて口ずさむ小さな俗謡の雰囲気がなくもありません。何より平明で口ずさみやすいのが、夢二の詩の特徴でしょうか。七五調を追求するあまり、詩の意味が通じなくなっていったのか、ほとんどナンセンスかブラック・ユーモアのようになっている詩や句もありますが、とにかく声に出して読んでみると、当時の人々に愛読されたというのも、わかるような気がして来ます。