山村暮鳥
「風は草木にささやいた」



  
  大きな腕の詩


 
 どこかに大きな腕がある
 
 自分はそれを感ずる
 
 自分はそれが何処にあるか知らない
 
 それに就ては何も知らない
 
 而もこれは何といふ力強さか
 
 その腕をおもへ
 
 その腕をおもへば
                                   ヽ ヽ ヽ
 どんな時でも何処からともなく此のみうちに湧いてくる大きな力
                       からだ
 ぐたぐたになつてゐた體躯もどつしりと
 
 だがその腕をみようとはするな
 
 見ようとすれば忽ちに力は消えてなくなるのだ
  めくら
 盲者のやうに信じてあれ
 
 ああ生きのくるしみ
 
 その激しさにひとしほ強くその腕を自分は感ず
  さちうす
 幸薄しとて呟くな
 
 どこかに大きな腕があるのだ
 
 人間よ
 
 此のみえない腕をまくらにやすらかに
 
 抱かれて眠れ