・自分自身の制御に影響し、対象異性に間接的に働きかける恋愛技術群

  ここから先の項目では、対異性コミュニケーションにおいて対外的に働き
 かける技術ではなく、自分自身の制御や、対外的な働きかけを選択・実行
 する際の判断や意志に関連した恋愛技術を挙げていこう。
 このなかには、男女交際、特に恋愛を楽しむ為に必要なモチベーションを
 獲得・維持出来るか否かに関するスキル(性質?)も含まれる。読んで頂くうち
 にわかって頂けると思うが、ここから先に挙げる幾つかの“恋愛技術”は、
 本当に技術という名前が妥当なのか甚だ怪しい。単に学習・模倣しただけで
 必ずしもすべての人に技術として身に付くか怪しく、「技術」という言葉を
 狭義で捉えるなら技術とは言えず、むしろ名人芸と呼ばざるを得ないものを
 含む。

  しかし、呼び名がどうあれ、以下の“恋愛技術”が恋愛や交際の帰趨に
 大きな影響を与えることだけは間違いない。そして、以下の技術・名人芸は
 単に恋愛や男女交際に限らず、殆どあらゆるコミュニケーションにも影響
 し得る、汎用性の高いスキルだとも推測している。ここから先に書くものは、
 捉えどころのないものばかりを捉えようとしているため、記述は困難を極める
 だろう。だが、それでもまずはやってみよう。
 最初に、自分自身の制御にいかにも関与していそうな、直接的かつ具体的な
 セルフコントロールの幾つかを紹介してみようと思う。


 ☆情緒制御(1)適度な不安耐性(2004 Nov.)(2005.Apr.小改造)


  恋愛や男女交際がお互いの情緒的な変動に富んだ営みである以上、
 そして期待や希望を伴うものである以上、不安は殆ど避けられない一つの
 心理状態である。とりわけ、交際というより恋愛という言葉が適切な状況では、
 これは真だろう。交際初期には対象異性との関係がこれからどう推移して
 いくのかに気を揉むだろうし、ステディな関係が始まったら始まったで、
 一時的なディスコミュニケーションや暫しの別離が不安をかきたてることもある
 (交際していたところで恋愛が永遠不変ではないのだから、当然か)
 だが、幾ら不安が必須のプロセスだからといって、あなたがあまりにも極端な
 不安を抱えている場合や、不安を制御できずに不安に振り回されてしまう
 場合は、対象異性はその度合いを察知し、あれこれと考えるだろう。適度の
 不安は察知されたほうが良いケースもあるだろうが、過剰すぎる不安は殆ど
 常に対象異性に好ましくない印象を与えるだろう(特に、男性が女性に察知
 された場合などは決定的な事が多い)

  例えば対象異性といつも一緒でなければ不安で、ベタベタベトベトを常に
 要求し続けていれば、対象異性としては流石にうんざりさせられる。そうで
 なくても、あまりに頼りない不安ばかりを表明し続ける場合、短期的な交際は
 ともかく長期的で安定した交際は期待薄だと対象異性は思うだろう(馬鹿or
 お人好しで無い限り)。長期的な交際や配偶にあたっては、頼りにならない
 不安漬けの異性は一般にありがたがられない。

  稀に、似た者同士の超不安男女がくっついて、驚異的な零距離交際を
 演じることもあるが、この場合も、お互いの近すぎる距離と不安に関連した
 要求は互いを疲弊させ、やがて愛憎の入り交じったきわどい関係に発展する
 かもしれない。※1

  このように、不安、特に過剰な不安は恋愛や男女交際に様々な悪影響を
 与える可能性がある。短期的な関係が志向されている場合にも、しつこさや
 距離の近さは嫌われる長期的な関係の場合も、あなたの不安が対象異性の
 行動・判断に制約を加える程ならば、対象異性もいつかはうんざりしてしまう
 可能性が高い。いや、十分にクレバーな男女ならば、高すぎる不安を持った
 異性は事前に察知してしまい、コミュニケーションのレンジに制約を設けて
 厄介な対象が接近して来ないように予防線を用意する事さえある。

  こういった事情を考えると、最低限の不安耐性は恋愛においてどうしても
 必要と言わざるを得ない。付け加えるならば、極端に不安耐性が低い人は、
 もはや恋愛に限らず様々なレベルのコミュニケーションにおいて問題が多発
 しやすいとも考えられる。不安の適切な処理と持久は、人間関係の構築には
 極めて重要な要素であり、重要な要素だからこそ対象異性も不安耐性が
 低すぎる相手は敬遠したがることだろう。

  じゃあどうすれば不安耐性は強くなるのだろうか?
 こんな難問に私は明確な回答を与えることは出来ない。それでも精神医学の
 本に書いてある事を思い出しながら考えてみると、不安を経験した後にちゃん
 と安心感が得られるような環境・境遇に長期間いることは、不安耐性を成長
 させるかもしれない。もちろん、歳をくってからよりは若いうちのほうが良く、
 出来れば0歳〜20歳ぐらいの時期が最も適している(というか、この時期に
 不安耐性だけでなく殆ど全ての心理的素養が育まれる予感)。とはいえ、
 20歳を超えてからでも手遅れではない。少なくとも心理学の世界では、
 完全に手遅れだと主張はしていない。まだ、何とかなる見込みはあると
 私も信じたい。
 しかし、上記の書き方は、まるで医者が不安の強いな子供への家族の対処法
 を書いているみたいである(というかそうだね)。あなた自身が極度に低い不安
 耐性を持っているなら、自主的にはどうすればいいのだろうか?人間関係に
 恵まれた状況(同性含む)に長く生活する、ぐらいしか私には思いつかない。
 不安耐性をより少ない度合いにしてくれる異性を見つけ、実際に付き合う事が
 出来れば結構なことだが、そんなパパやママのような異性はそう多くはない。

  ちなみに、不安を経験した後に必ずしも安心感が得られない環境・境遇
 (例:不安がっていると、何の法則性もなくランダムに安堵と叱責が交互に
 得られる環境や、とにかく叱責しか得られない環境、など)にどっぷり漬かって
 いれば、後天的に不安耐性をひどく出来るかもしれない。不安があった時に
 何らかの形で解消され得ないものだったり、解消の為の心理的/社会的な
 対処法を学習させないような環境だったりすれば、どうすれば不安に耐え
 られるのか、わけがわからなくなってしまうかもしれない。もちろんこの場合も、
 若ければ若いほど不安耐性をひどくしやすそうだ。生来的な気質による
 個人差はもちろん存在するだろうが、一般的傾向としては、そうだと思う。

  なお、不安耐性が極端に強すぎる場合も別の問題を惹起し得るだろう…
 と言いたいところだが、仮に不安耐性が極端に強くても、対象異性の不安に
 ちゃんと聞く耳を持つことができ、本来不安を惹起しそうな事態に対しても
 冷静に対処できるなら、あまり問題は発生しないかもしれない。または不安を
 感じなくても、意図的に不安を表明できるような素養を持っていれば、やはり
 問題を起こさなくても済むかもしれない。もちろんこういった人達は稀で、
 殆どの“見かけ上不安耐性が極端に強い人”は、即ち“ただ鈍感なだけの人”
 に過ぎないようだ。不安に強いという事と鈍感なだけという事は、なかなかの
 隔たりがある。ただ単に鈍感な場合、鈍感なりきの問題が生じる事はお忘れ
 なく



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 【※1きわどい関係に発展するかもしれない。】

  お互いに近づき拘束しあう事こそが愛だと定義しているかのような、こういう
 人達を時々見かけることがある。不安を解消する為のコーピングとして
 互いに密接な心理的・物理的距離を選択するのは了解可能ではあるが、
 有効なコーピングとは言い難い。なぜなら、零距離に向かうような交際は
 その他の様々な生活上の問題を生じるし、互いの心を近づけようとすれば
 するほど、相互の相違点をむしろ鮮明にしてしまって齟齬を生じるからだ。
 こんなやり方で、不安耐性を誤魔化して安心出来る筈がない。お互いの
 拘束で疲弊はするし、お互いの違いが不安や不満を煽るしで、むしろ関係
 が存在しなかった頃のほうが精神的に満足していたと言えるほど不安や
 不満を抱えながら罵りあう付き合うはめになる。

  世間でいわゆる“手を出してはいけない女”と言われる女性のなかには、
 こういう不安耐性の問題を抱えているタイプも混じっている(男性にも、いる)
 もちろん、アンテナの発達している男性(と女性)は、こういった危険な異性を
 感知して、恋愛や配偶の対象から意識的に/無意識のうちに外してしまう。
 しかし、アンテナの発達していない男性や女性は、不安耐性が極度に低い
 異性にも無防備で接近してしまって、大やけどする可能性がある。特に、
 アンテナが発達して無くてしかも恋愛観が幼いなら尚更である。
 もちろん、このような“危険防止アンテナ”は、それ自体貴重な技術である。
 アンテナの精度が高ければ高いほど、不安耐性の極端に低い異性に振り回さ
 れるリスクは低くなる。逆に、アンテナの精度が高い場合、自分自身の不安
 耐性の低さにちゃんと振り回されてくれる異性を察知できるかもしれない。
 いや、現実には、不安耐性の脆弱さを補うかのように、お人好しの餌食を
 適切に見抜くアンテナを獲得している“手を出してはいけない女/男”が
 結構いたりするから恐ろしい。不安耐性脆弱+対異性アンテナ発達+対外的
 なスキルの充実の組み合わせの異性は、悪夢のような交際を現出しうる、
 世間のそこここに開いている地獄への入り口である。それを地獄と感じない
 ような心の広さと忍耐がある人はいいが、少なくとも私は絶対に遠慮する。

 (→対象異性の選択と目的も参照)