☆会話技能、表情、目、声音(2004 Oct.)(2005.Apr.小改造)

  男女の交際は、情緒的な色彩に強く支配されている。特に、それが恋愛と表現
 される場合には、非言語的で情緒的な交流を抜きにしては語れない。そして気持ち
 だの情緒だのといったものは、目の運動や声音、表情などに強く反映される
 言語的にNoをどれだけ伝達しても、非言語のレベルでYesというシグナルを発散
 しまくっていれば、相当ぼんくらで無い限りはYesというメッセージを見抜いてしまうし、
 逆に「愛してる」なんて口で言ってみたところで、それ相応の表情や声音や視線が
 伴わなければ(相手がよほど鈍感でない限り)全くといっていいほど通じない。情緒を
 色濃く反映しやすいこれらの非言語的シグナルは、非言語コミュニケーションスキルの
 余程の達人が、十分に醒めた状態を維持してでもいない限りは擬態しきれない。
 このため一般には、視線・声音・表情・身振り・沈黙・位置関係などといった
 ノンバーバルな情報は、相手の心境を類推するうえで言葉以上に重要な手がかり
 として期待できる。また、もしも適切に対象異性に対して非言語的なシグナルを
 expressできるならば、こちらの心境を伝達するうえで言葉以上に強力な効果が
 期待できる。

  逆に言えば、これらの情報の送受信が難しい男性や女性は、恋愛において対象
 異性とのコミュニケーションを言語的なものに多く依存せざるをえなくなる。こうなると、
 対象異性が送ってくるノンバーバルなメッセージを無視したり誤解してしまうかも
 しれないし、いつになっても望ましい非言語的なメッセージがあなたから送信されて
 来ないことに、対象異性はイラつくかもしれない。また、言語とは正反対の情報が
 非言語的に主張されている場合などは、表面的な言語メッセージを鵜呑みにして
 しまって悲惨な結果を招く可能性も発生することになる。少なくとも恋愛や男女交際に
 限ると、言語的な情報よりは非言語的な情報のほうが対象の本音がにじみでやすい
 傾向にあると思われるが、そのような場合に本音を無視して言葉の建前を信じ込んで
 しまうとろくでもない摩擦が発生しやすい。特に、言葉ではYesと言っていながら
 非言語的には強くNoを主張している男性や女性はかなり多い。ここでYesを選択して
 行動すると、それはもう惨めな思いをすることになる。

  このように重要と思われる非言語的な情報の発信と受信だが、どうやってマスター・
 上達すればよいのだろうか。簡便な上達方法ははっきりとは判らない。あるいは
 非言語的情報が比較的無視できるような交際形式を選択し、無理に上達しようと
 しないで済ませるのもアリかもしれないが、自分の好きなようにコミュニケーションの
 形式を選べる状況は実際そう多くは無い。

  ただ一つだけいえることは、どんな道具も道具として積極的に用いなければ習熟する
 ことが出来ない、という事だ。視線、声のイントネーション、顔の筋肉を動かして表情を
 つくること、いずれも意識的に操るのと無意識でただ発するのでは、自分自身に
 フィードバックされる反省や学習の効果が全く異なるだろう。笑顔や声音などの
 expressionは、まじめに意識して練習すれば相当異なったものにすることができる。
 瞳孔の開閉すら、トレーニング次第ではある程度まで意識的に行うことが可能だ
 (この場合は、自律神経を介して瞳孔を操作することとなるので、興奮や喜びなどの
 情動を人為的に作って脳に叩き込む必要があるので色々操作しなければならず、
 精神的消耗が激しいが)。また逆に、対象の表情や声音などに情報が潜んでいると
 考えて対象異性とコミュニケーションを行うのと、バーバルなレベルだけを意識して
 情報を集めるのでは、得られる情報の質と量にも大きな差が生まれてしまう
 言語的な情報だけで対象異性とコミュニケーションをとるのは、テレビの文字放送の
 文字だけを見ているのにも等しい情報の乏しさである――音声情報や視覚的情報を
 抜きにした、文字放送の文字だけを眺めるテレビ鑑賞が、どれほどのハンディか
 考えてみて欲しい。もちろん、このような情報入出力上のハンディが存在するなら、
 あなたの恋愛や交際の帰趨にも大きな影響を与えることだろう。

  殊に、俯いたり照れたりして相手の顔や姿を見ないのは、致命的な情報的損失
 といえる。対象異性に関する非言語的情報をキャッチすることが出来なくなってしまう
 し、自分自身の非言語的メッセージを送ることも出来なくなってしまう(照れてますって
 いう情報だけは相手に送信出来る。勿論、相手が照れていないような場合は、そんな
 姿を冷静かつ一方的に観察されてしまう)。これはまさに、目を瞑ってテレビから情報
 収集しているような状態である。非言語的な情報を異性とやりとりする技術に習熟する
 せっかくの機会も失うし、肝心の相手の事を理解する情報チャンネルが思いっきり
 狭められてしまう。時にはそういう照れや俯きといったジェスチャーを表明すること
 そのものが効果的な状況もあるはあるが、いつもそれでは困りものである。

  なお、恋愛上手な男女、ことに多くの女性は自分の感情や非言語メッセージを
 一定レベルまで自覚的に操作することが出来る。こういう人は、例えば泣くことが最も
 適応的で得な状況には、それはもう上手に泣くことが出来てしまう――そして、
 あなたがいなくなった十分後にはケロリとしているのだ!非言語コミュニケーションに
 あまりにも長けた異性を相手にする場合、対象異性の非言語的情報をどこまで
 信じていいのかわからなくなることがある。かといってそういった情報操作の鬼と
 対面する時は、言語的情報を信じていいのかも全く不透明であるため、対象異性が
 何らかの搾取や 不正を図っていたとしても気づかない可能性が高く、厄介である。
 もちろんここで信頼してあげるのも一つの選択だが、その場合は当然裏切られても
 悔やまない・恨まないだけの覚悟が必要だ。しかも、せっかく覚悟をしたところで、
 本当にワルい相手に搾り尽くされたうえで恋愛が終わった場合、異性に対する重大な
 不信感を残すかもしれない。
 (まあ、それもコミで恋愛と言えるのでしょうけどね)(っていうかそういう異性に惚れた時点で終了)

  逆に言えば、対象異性に自分の望んだ情報だけを送り、相手からはあらゆる情報を
 得る事が出来る状況は、本当に有利で、そして恐ろしい。美徳とか慈悲とか節制とか
 そういうものを抜きでこれが出来てしまうと…自分が好きになった異性を片っ端から
 滅茶苦茶にしては分かれるという繰り返しに陥ってしまう、かもしれない。尤も、冷酷
 無情な搾取こそを男女交際の至上命題としているサイコパスや、十分に自己中心的
 な精神の組み方をしている人には問題のないことだろう。これは、あなたの倫理的な
 基準や価値観如何では恐ろしくも何とも無いかもしれない。→こちらも参照 
 情報的優位性を確保している側が男女交際の目的を搾取に限定している場合、
 代償の極めて少ないワンサイドゲームを展開してしまう可能性がある。いやだから
 こそ、尚更対象異性とのコミュニケーション上の情報格差やスキル格差は避けたい
 ものなわけですが。

 ※ここら辺、特に情報技術格差と倫理観に関する問題は、私の思い過ごしかも
 しれません。


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