雪原の記憶
いったん溶けた雪が
夕刻の冷気に凍って
白く光っている
誘われるように踏み込み
ザクリ 
足を沈めると
子供の頃
春間近の堅く凍てつく朝
草原を走った夢が蘇る

目に染みる銀の世界
小学校は青い空の彼方
通学の道を無視して
雪の上を駆け抜ければ
嘘のように近い
 「水路があるかもしれん
  はまったら終わりだよ」
止められても
子供たちは雪原を走った
その小さな足の重さで
雪の中に沈まぬよう
早くたどり着けるよう
体を宙に浮かせるように
息を切らして駆け抜けた

懐かしさに佇めば
足下から ジワリ
寒気がしみ込んでくる
もうあんな朝はこない
純白な寒さも
小さな足も
今を駆けた無心の瞳も

ホッと吐いた息が白い
見上げれば
空に星
「まぁ いいか」
春はすぐそこだ

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