風の強い朝 青年は畠に出かけた 父や母や祖父や祖母や たくさんの目から逃れたくて 風の強い朝 作物は雨を待っていた 肥料でもなく 日の光でもなく まして乾いた風ではなく 空は低い雲を 急がせている なまぬるい風は 前から横から 青年を大きく揺さぶる 風の強い朝 青年は何かを待っていた 頭で理解できても 動かない心を 変えてくれる何か 外界を受け入れ 瑞々しく新たに 羽ばたけるような きっかけになる何かを 風の強い朝 雨は そこまで来ていた 戻る