#45「妖花ビシュムの死」
昭和六十三年八月二十一日放送 脚本・宮下隼一 監督・蓑輪雅夫
粗筋
光太郎、杏子、克美は杏子の母校の生徒達の万引きを目撃。万引きを注意したユミコ(杏子の元級友)は光太郎達に、教師ナガイの赴任以来学校の様子が変だと語る。光太郎は単身学校に潜入、ナガイと生徒達に遭遇。ナガイの正体はビシュム。光太郎は変身するもビシュムは挨拶程度で退却。ビシュムは杏子を誘拐してダロム、バラオムを驚かせる。
再び校内を探る光太郎は地下の花園に引きずり込まれる。光太郎はビシュムの隙を突いて杏子を奪還、変身してビシュムの猛攻に応戦。ビシュムはBLACKを捕まえてその動きを封じ、シャドームーンにとどめを請う。シャドームーンの放った光線はビシュムの体を貫いてBLACKに到達せんとするも杏子がBLACKにしがみつき、シャドームーンは光線を止めてしまう。シャドームーンへの問いを遺してビシュムは爆発、戦死。BLACKと杏子は正気に戻った生徒達を解放、地下の花園は爆発。
暗黒大公曰く
さあ、最終決戦七作の幕開けである。
「死ぬのか? やだ! 美秀夢様がいなくなったら『BLACK』は色気に欠ける。」この回の前週、十四日の筆者の日記の一節である。果たして、そのとおりになった。侍女怪人の太もも程度では暗黒大公は喜ばぬぞ。杏子は子供だし、克美は暗いし。
さて。
「『子育て』を考え」「いま、世界の女性は」「母親蒸発」「虐待」「放任」「母性放棄」様々な見出しが並ぶ。何も児童虐待云々は今に始まった事ではないが、番組当時の昭和末期より平成の現代の方が事態が悪化しているのは間違いないだろう。その原因は一概には言えないが、日々報道される陰惨な事例を聞くとやはりゴルゴムの仕業ではないかと思われてならない。
「母性等というくだらぬ感情」#13では母性をとことん悪用しておいて今回はこれだもの。
料理教室で次々に毒気に当たってしまう受講者達、平気なのは人間に化けたビシュムと白人女性のみ。あの毒気は日本人女性にしか効かないのだろうか。「皆さん、皆さん」白人女性ドロテ、筆者の日記によると同日の「ジライヤ」にも出演している。
泣く赤子を放置して踊り狂う母、飯の支度もせずに寿司を取ってカラオケに興ずる母達。このページを読んでいるおっかさん方、身に覚えは無いか? オフラインミーティングやひいき役者の公演の見物の為に遠征している頃、家では腹を空かせた子供達が泣いていないか? 踊っていた母・アヤコの夫は会社から帰宅するにはまだ窓の外が明るいような気もするが、たまたま会社から自宅に電話でもしたら異変に気付いて急いで早退したか。
万引き事件発生、ユミコ登場の時点では周囲の誰も気に止めていないようだが光太郎が袋叩きにされるに至って通行人たちも異変に気付く。しかしキャピトラ組とユミコの様子を遠巻きに見ているだけで、一時立ち止まるだけですたすたと立ち去る者もいる。都会の街角。
今回も毎度の聖和中央病院。
「日本でも有数の女性を女性らしく育てることで有名」何ともくどい言い回しの特徴を持つ学校だ。要するにお嬢様学校なのだろう、杏子自身大学教授令嬢である。ユミコに現況を訊かれて口ごもる杏子、気まずい顔をする光太郎と克美、没落令嬢の悲哀だ。
白昼堂々としかも女子高に突入する光太郎、実に大胆な奴。光太郎を金縛りにしたナガイ先生の実に嬉しそうな表情、やはりビシュムは光太郎をいじめて喜んでいるな。もし光太郎の服を掴んで締め上げるのが女子高生達ではなくその筋のおっかさん方だったら、更に光太郎の服を剥いで丸裸にしてしまっただろう。
今回の作戦をBLACKに感づかれたことについてシャドームーンに弁明するビシュム、彼女をバラオムが責めてビシュム言い返す。大怪人達には珍しい言い争いの場面。
生け花とは和室でするものだと思っていたのだが、ナガイの教え子達は椅子に座って、ナガイのピアノを聞きながらしていた。それがゴルゴム流なのだろうか。
地下の花園にて、ゴルゴムにとっての「禁じ手」とも言うべき「シャドームーンの妹」を人質に取ってのビシュムの作戦。「やれ、やるのだ仮面ライダー、キングストーンを渡せ」興奮したのかビシュムの声は上ずっている。苦渋の表情の光太郎と自ら犠牲となることを厭わない杏子、そして喜色のビシュム。実に見せ場だ。
ビシュムは格闘戦が苦手と見える、BLACKに対しては専ら旋風や体当たり、火球発射で戦いを挑んでいる。BLACKの頭上でぐるぐる旋回してBLACKの目を回すとは実に彼女ならではだ。
地上に脱出したBLACKと女子高生達を迎えるキャピトラ組とユミコ、ユミコの着ている緑と白のシャツは#51で杏子が着ているから、この時は杏子がユミコに貸したのだな。
やはり今回の最大の問題はBLACKにとどめを刺さなかったシャドームーンの本心だろう。一度は光線を放ったシャドームーン、しかし杏子がBLACKにしがみつくと攻撃の手を下ろしてしまう。光太郎の考えどおり、信彦の自我がそうさせたのだろうか、何なのか。復活直後には克美を使って光太郎を抹殺しようとしたシャドームーンではあるが、果たして今回の本心は如何? 何分にもシャドームーン自身の心の揺れが明確には描写されていないから、その分想像は膨らむ。
ビシュムの最期、体から煙を噴き出し、はあっ、はあっと喘ぎながらの悲痛な叫び! 「何故です! どうしてとどめを! シャドームーン様、シャドームーン様!」暗黒世界の花園、花びらの舞う中で一人の華麗なる大怪人が散る。大変悲壮感に満ちた最期だ。そのビシュムの問いに対しシャドームーンは沈黙を保つ。
ビシュムの戦死を目撃した両大怪人、ダロム「おおっ、ビシュムが、大怪人ビシュムがあっ…」バラオム「死んだ…」数万年も共に勤めてきた同僚の死にがっくりと膝をつく。この両者の言はテレビを見ていた当時の筆者の感情そのものでもあった。彼女の死を「哀れ」と評している筆者の日記。
そして創世王の譴責、シャドームーンに対してひときわ強く電撃を与えて全責任を問う。
ここでシャドームーンの台詞に注目。「忘れたとは言わせん、次期創世王の候補者として私とブラックサンを選び競わせていることを、戦っているのは私とブラックサンなのだ」あの改造手術時の事故が無ければ確かにそうだったであろう、しかしブラックサン脱走、連れ戻し失敗の時点で創世王は次期創世王にシャドームーンを指名しているではないか、その為にゴルゴムは次々に怪人達を放って、危険人物・剣聖ビルゲニアまで動員してブラックサンを抹殺しようとしたのではなかったのか。どうも創世王は、シャドームーンを自らの後継者の第一候補としながらも、やはり要は戦いを制覇した者であれば誰でも構わなかったように感じられる。そしてシャドームーン自身に、創世王や組織の力よりも自分自身の手でブラックサンを斃したいという思いもあるようだ。必ずしもゴルゴムの操り人形ではないようにも思われる。
クレジット
オープニング
仮面ライダーBLACK
吉川 進
堀 長文
(東映)
プロデューサー
井口 亮
山田尚良
(毎日放送)
原作 石ノ森章太郎
少年サンデー
てれびくん
連載 コロコロコミック
小学館学習雑誌
テレビランド
脚本 宮下隼一
音楽 川村栄二
主題歌
「仮面ライダー 「LONG LONG AGO,
・
BLACK」 20TH CENTURY」
作詩 阿木燿子
作曲 宇崎竜童
編曲 川村栄二
歌 倉田てつを 歌 坂井紀雄
(コロムビアレコードCK‐797)
南 光太郎
仮面ライダーBLACK
倉田てつを
秋月杏子
井上明美
紀田克美
田口あゆみ
山本恵美子
ド ロ テ
長瀬静香
松本亜紀
石沢 晶
白浜健三
杉仲 彩
矢羽純子
坂田佳枝
神田真里
岡元次郎
北村隆幸
飯田則子
末永貴久
岩田時男
(ジャパン・アクション・クラブ)
アクション監督
金田 治
(ジャパン・アクション・クラブ)
ナレーター 政宗一成
ダロムの声 飯塚昭三
大怪人ビシュム
好井ひとみ
大怪人ダロム
山本貴浩
大怪人バラオム
高橋利道
監督
蓑輪雅夫
エンディング
撮 影 松村文雄
照 明 中川勇雄
美 術 井上 明
造 型 前澤 範
録 音 太田克己
編 集 菅野順吉
選 曲 茶畑三男
効 果 大泉音映
製作担当 寺崎英世
進行主任 竹内洪太
助監督 岩原直樹
計 測 岡部正治
記 録 栗原節子
製作デスク 岩永恭一郎
装 置 東映美術センター
操 演 国米修市
美 粧 サン・メイク
衣 裳 東京衣裳
装 飾 大晃商会
資料担当 小佐野 聡
(石森プロ)
キャラクター製作 レインボー造型企画
イラスト 野口 竜
プロデューサー補 高寺成紀
合 成 チャンネル16
現 像 東映化学
オートバイ協力
S SUZUKI
ビデオ合成 東通ECGシステム
峰沢和夫 近藤弘志
前岡良徹 鈴木康夫
(株)特撮研究所
操 演 鈴木 昶
尾上克郎
撮 影 高橋政千
照 明 加藤純弘
美 術 佛田 洋
特撮監督
矢島信男
△東映
製 作
毎日放送
使用音楽一覧
場面 | 番号または歌曲名 | 音楽メニュー |
公園 | 「仮面ライダーBLACK〜星のララバイ〜」 インストゥルメンタル |
新聞の見出し | M3 | 張りつめる空気 |
副題 | M48B別T2 | サブタイトル |
料理教室 | V7aT5 | 邪悪の神殿 |
受講者の異変 | V9‐2 |
横断歩道 | M20 | 世紀王脱走 |
万引き | ME2b |
ユミコ登場 | M4 | 焦り |
万引き少女達の目 | M24コーダのみ | 策謀 |
病院 | M1コーダのみ |
朝霧女子高等學校 | M8 | 闇の視線 |
ナガイ先生と生徒達 | M31 | 操り人形 |
振り向くナガイ | M15冒頭のみ | 怪人出現 |
光太郎金縛り | MCT3 |
M34 | おぞましき姿 |
変身、戦闘 | 「ブラックホール・メッセージ」 |
ビシュムの言明 | M40 | 挑戦 |
再び学校 | M46 | 急襲 |
杏子誘拐 | M41 | チャンス到来 |
構内捜索を続ける光太郎 | V8 | 絶体絶命! |
ビシュムの誘い | V7Brass抜き |
地下の花園の光太郎 | V1弦のみT2 |
光太郎を脅迫するビシュム | M13 |
剣を手にする光太郎 | M9 | 凱歌 |
光太郎逆転、ビシュム旋風 | M2 | シティ・チェイス |
変身 | 「変身! ライダーブラック」 イントロとコーダのみ |
戦闘 | 「仮面ライダーBLACK」 |
BLACKを捕まえるビシュム | V8 | 絶体絶命! |
ビシュムの最期 | V7aT2 | 邪悪の神殿 |
脱出 | M9 | 凱歌 |
光太郎の希望 | 「ブラックホール・メッセージ」 イントロとコーダのみ |
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