『結局』

 

3月2日

 

先週の木曜日に満を持して頼んでいた小鳥屋へ電話を掛けてみる。

 

1月末の段階で2〜3週間待ってくれという事だったので、忘れられていないかという心配を解消する為と早くしてくれと

 

プレッシャーをかける為に電話をしてみた。

 

鳥屋のおばさんの返事は「白文鳥はすぐに入荷できますけど、桜文鳥はあと2週間ほど待って欲しいです」だった。

 

ここまで待てば、焦る事は無いのでのんびり待つ事にする。

 

その店から買ってきたトンがオスなのかメスなのかまだはっきりしない事もあるので、縁が切れない間ならば、

 

万が一トンがオスの場合、トンを返品できるという計算もあった。

 

その翌々日の土曜日のかっきり10時にその店のおばさんから、桜文鳥のメスが2羽入荷したとの連絡が来た。

 

すぐに行くと足元を見られそうなので午後一ぐらいに店に行くと答えたが、この前の今日の事なので慌てて変な鳥を

 

入荷したのではとちょっと勘ぐったが、いくらなんでもそんな事は無いだろうと考え直した。

 

昼頃、自前のキャリーケースを持参して店に到着。

 

おばさんが言う入荷した桜文鳥のメスは2羽、籠の中にいた。1羽は原種っぽい色合いで、もう1羽はまだらの見栄えのしない

 

貧乏くさい桜文鳥だった。この前の返品男は同じ籠の中にいて売れずに残っていた。

 

どちらを選ぶかは勿論、迷う事無く原種っぽい方にした。

 

ハツはまだらなので、(飼主が言うにはおこがましいが、見栄えのするまだら文鳥)原種タイプの方が、

 

良い色合いの子供が生まれるのではないかと期待もあったからだ。

 

店のおばさんは長い間待たせた事への詫びの代わりとして自家製の粟玉を袋に入れて差し出した。

 

断る理由もないし、問題が目出度く?解決したのだからと気持ちよく受け取った。

 

時間や交通費を考えると粟玉では折合いがつかないのだけど、500円負けてもらっている負い目もあって、目をつぶる事とした。

 

家へ帰る車の中で飼主が口笛を吹いてもさえずる事はしない、やっとメスと巡り会えたかと嬉しく帰宅したのだった。

 

しかし、その喜びは、帰宅後3時間後に打ち破られた。

 

幼い返品2号は我が家の快適な環境に喜び、拙い唄を一度だけ披露してくれた。

 

すぐに返品しようかと思ったが、夕方の買い出し時間が迫っている事もあり、その店まで往復2時間掛かるので、

 

明日、電話もせずに返品する事に決めた。ただ、ここで問題になるのは返品2号の変わりにもう1羽のメスと称される

 

見栄えのしないショボイ桜文鳥を押し付けられる事だ。

 

店的には仕入れた文鳥を売却したいだろうから、これと替えると言ってくる事は想像できる。

 

飼主としては押し付け文鳥対策も考えなければならないがが、いい加減この騒動にうんざりしていたので、メス探しに終止符を打ち、

 

それと放鳥時のドリカム状態に終りを告げることを決意した。

 

夏の雛探しの時に購入店候補の一番手として決めていた千葉東の店に、秋生まれの桜文鳥がいるのを知っていた。

 

1月の姫探しの時に、2羽程桜文鳥の幼鳥が売られていたが、雌雄の判別するにはまだ幼かったし、

 

おまけに交換・返品が出来ないと言われたので、あと1ヶ月ほど待たなければならなく、仕方なくその時は諦めたという経緯があった。

 

そこの店に確認をして駄目だったら、西船橋の小鳥卸商の店に行き、メスであれば年や産まれ等は関係なく買って来ようと、

 

もう何でもいいから見栄えさえ良ければ買ってしまうと、かなり投げやりになっていた。

 

翌日の午前中、千葉東の店に確認を取ると、生後6ヶ月近くのメスっぽいのとオスっぽいのが1羽づつ居ると返事が返ってきた。

 

よし、ここに決めたと、早速返品に出向く。

 

返品2号を車に乗せ、鳥屋へ向かう。車の中では落着かない様子の返品2号だったが、王朝には関係無い。

 

店の彼、彼らが良い家へ買われる事を思うだけだ。店に着き、おばさんに昨日の文鳥がオスである事を告げると、

 

今度は、「メスからオスになっちゃたのね」とはさすがに今度は言わなかった。

 

メスと言ってオスを納品する商社との取引は、今後止めたらと嫌味を言ってみたがおばさんには、

 

言っている意味が理解出来なかったようだった。

 

案の定、おばさんは代わりにもう1羽のショボイ文鳥を押し付けてきた。

 

こんな貧乏臭い見栄えのしない文鳥は勘弁してもらいたいので、

 

「また、オスだったら嫌だし、ここまで来るのは大変なんですよ」と試しに言ってみた。

 

それで駄目なら、別の店で買う事になっていると言うつもりだった。

 

おばさんは昨日の今日であり申し訳ないと思ったのか、「本当はこんな事しないのだけど、長く待たせた事だし返金しますよ」と言い出した。

 

そして桜文鳥のメス1羽分の4000円を差し出した。以前、2羽で7000円と1羽500円分負けさせていたので、

 

本当は3500円なのだが必要経費だとしてそのまま受け取ろうかと思ったが、後味が悪い事の上に砂を掛けるようなものだから、

 

正直に500円多いと申告したのだった。その500円でおばさんは嬉しそうな顔になった。

 

さっさと店を出て一旦、家へ帰る。この店に来る途中にある小鳥卸商にメスがいるか知りたかったが、今日は日曜なので休みのはずだった。

 

千葉東の店に良いのが居なかったら、来週土曜日にその小鳥卸商へ来る事にした。

 

家に帰り、昼食を食べながら店での遣り取りを嫁様に話し、その後、千葉東の店に家族全員で向かった。

 

嫁様はそこの店に置いてあるモモイロインコが大のお気に入りで、いずれ飼いたいと、とんでもない夢を持っている。

 

因みに定価40万円也。これは余談。

 

その店の籠には、桜文鳥が2羽いた。その2羽は仲がよく羽繕いし合ったりしている。

 

オスに見える方は普通の顔立ちと色合いを持った桜文鳥だった。

 

しかし、メスに見える方は、胸のぼかしがほんの少し入った色合いだったが、顔立ちが少々奇妙だった。

 

どこが奇妙と言うと、奥目なのだ。頭が少々偏平で、目の上が盛り上り、頬が下膨れになっている為なのか奥目に見える。

 

今まで見たことの無い奇妙な顔にどうしようか迷ってしまった。

 

嫁様がどうするのか急かすので、店のおにいさんにメスはどちらか訊いてみた。

 

やっぱり奇妙な顔をした方がメスだろうと言う。もし、この文鳥がオスだったら返品・交換が出来るのかと尋ねたら、

 

「生体なので、返品は出来ません」と答えが返ってきた。

 

メスだと明言を避ける事もさながら、返品できないと言う事にも一理あるなと思いながら、

 

「2回連続オスをメスだとつかまされたからね」と言ってみたら、気の弱そうなおにいさんは「うちの店でですか?」と

 

ビックリした顔で逆に訊かれてしまった。そうでない事を告げて、しばし観察しながらおにいさんとメスかどうか話し合った。

 

結論として、オス同士であればこんなに仲良く出来ないだろうし、オスっぽいのは9割方オスだろうという店側の見解があった。

 

それでは、このオスはぐぜったり、さえずった事はあるかと訊くと、それは無いとの事だった。

 

博打になるが、かなり投遣りになっていた事と、自分の目で見てメスだと感じた勘を信じる事にした。

 

駄目なら駄目でその時に考えようとしたのだ。

 

帰宅の途中で、新鳥の検便に利用している動物病院へ立ち寄り、検便してもらう。結果は問題なし。

 

自宅へ帰り、早速午前中まで返品2号が滞在していた参番籠に入れてみる。

 

新しい姫様は先程まで同棲生活を送っていた為か、鳥恋しくてハツに対して興味津々のようだ。

 

そのハツも独身生活を余儀なくされていた為か、もの凄く興味が有る様で見ていて面白い。

 

まるで「俺の嫁か、俺の嫁なのか」と言った感じで、隣の籠を見る。ハクまでも新しい住人に興味を持ったようだった。

 

3時間ほどほっといたが、少し慣れてきた様だったのとハツが騒がしいので、ハツを新人の居る参番籠に入れてみた。

 

オスならばハツがすぐに喧嘩を仕掛けるだろうと思ったからだ。

 

しかし、ハツは新人を女性と見たようで、ハクがやって貰っているように羽繕いをせがんだりしている。

 

そして、この新人君に「ナン」(三度目になるが)と名付けたのだった。