『連孵』

 

右朝のナン王后は、7個の卵を産むのに9日間掛かってしまった。

 

一般的に文鳥は孵化日をそろえる為、3〜4個目を産んだ辺りから抱卵を開始するという。

 

ナンは、セオリー通り8月21日の3個目から抱卵を開始したが、

 

しかし、7個目が産まれたのは5日後の8月26日だった。この日で粟玉の供給を止めることにする。

 

右朝の第一太子が生まれるのは、抱卵開始後の16日〜20日後と予想すると、

 

孵化予定日は、9月6日以降になりそうだった。指折り数えながら、孵化予定日を迎える。

 

9月6日、ストレスを発散させる為に5分間放鳥させて、その間に覗いて見るが、卵はまだ孵っていない。

 

9月7日、前夜と同じ様に覗いて見ると、箱巣の中になにかうごめく小さな肉がある。

 

おお〜っ、待ちに待った太子の誕生だ!今宵は祝杯だ!偉いぞ、ハツ&ナン!

 

捕まえて頬擦りしてキスしてあげたいが、本人達は御免蒙ると嫌がるだろうから

 

拍手だけを送るだけとした。慌てて写真を撮って素知らぬ顔をして鳥たちを御宮へ帰してしまう。

 

先週、検卵をした時、はっきりと有精卵とわかったのは1個だけだったので、後は無理かなと半分諦めながら、

 

心のどこかでは、あと2〜3羽生まれるのかなと期待していた。

 

9月8日、北壱号だけが眠っている。やはり、1羽だけかと本気でがっかりした。

 

9月9日、北弐号誕生これで世継問題は解決だいやー目出度い目出度い

 

9月10日、北参号誕生2羽よりも3羽の方が楽しいぞ目出度いなぁ

 

9月11日、北四号誕生凄いぞ、6個中、4個の孵化、しかしこれ以上増えたら大変だ。

 

さすがに、スーパーエロ文鳥の力を持っても、これ以上孵化しないだろうと思っていた。

 

この北四号の孵化を確認したのは、帰宅後の19時くらいだった。

 

この時、残った卵の数は2個だったと記憶している。

 

22時になって、放鳥したあと、箱巣の中の太子たちの写真撮影を行う。

 

撮影を終えて、ふっと籠の下を見ると、糞きり網の下でうごめく肉が有る。?

 

箱巣を見ると、4羽の雛が転がっている。5番目の太子だ!いつの間に落ちたのだ?

 

どのくらいの間、落ちていたのだろう?とにかく、金網を外して、そっと摘み上げて

 

箱巣の中に戻す。落ちた時の衝撃で、どこかの骨が折れているのではないかと思ったが、

 

こんな小ささじゃどうする事も出来ない。北五号の持つ強運に賭けるしかない。

 

もし障害があったら、我が家で天寿をまっとうするまで面倒を見るしかないと覚悟した。

 

北五号を戻す為に箱巣を降ろしたついでに、最後の卵を検卵してみた。

 

光に透かすと白く何も入ってない。気室があるということだけが判断できた。

 

重さを量ると2gだったが、これは無性卵と判断して王朝の墓所に埋葬した。

 

しかし、この状態になっても我が家にはまだまだ抱卵されている卵が5個ある。

 

左朝の5個の卵がしっかりと温められているのだ。

 

しっかりもの文鳥のトンは、8月24日から毎日1個づつ卵を産み、4個目を産んだ8月27日から抱卵を始めた。

 

その翌日の28日に最後の5個目の卵を産んだけど、旦那がのんびりおっとり短絡思考のハクなので、

 

ほとんど受精の期待はしていなかった。そのうえ検卵した際、期待出来そうな卵は1個しかなった。

 

しかしあとで、このハクの恐ろしい実力を知る事になる。(馬鹿にしてごめんなさい)

 

左朝の第一太子の孵化予定日は、計算上9月12日以降になりそうだった。

 

そして予定通り、北五号の産まれた翌日から左朝の太子が産まれた。

 

9月12日:西壱号誕生この際、1羽だけでも良い。飼主は、本当に期待していなかった。

 

9月13日:西弐号・参号・四号、トリプル孵化。ここまで来れば上出来じゃないか

 

右朝が孵化率=8割3部3厘だったので、同じ様に左朝はこれで打ち止めだろうと思った。

 

しかし、まさか全ての卵が孵化するとは、お気楽能天気な飼主でさえ想像がつかなかった。

 

当日は土曜日だった為、サイトの更新日に当っていた。続々と産まれる雛への祝い酒で

 

酩酊しながらの作業はつらかったが、何とかサイトを更新することが出来た。

 

もう一度、可愛い雛の顔を見てから寝るかと左朝の箱巣を覗いてみた。すると、

 

その夜、更新した戯言コーナーに「最後の卵は、孵化しないでしょう」なんて、書いた為かどうかは判らないけど、

 

9月14日午前12時過ぎ:西五号が飼主を嘲笑うように孵化していた。!!

 

結果として9月7日〜9月14日の8日間の間に、10羽の太子が誕生した。

 

雛が産まれた嬉しさに舞い上がっている飼主は、10羽全部の面倒を見る事が、

時間的・金銭的(飼料代)にどんなに大変な事か、この時まったく気付いていなかった。