── あべこずえ報告 ──
「さてみなさん、ようこそ」と言いたいところですが、今回だけは、見えない人/
見えにくい人とのアニメーション作りなんて前代未聞!
主催者としてもつい不安な気持ちで、「みなさん、よくも参加されましたね」という
へんな挨拶でワークショップが始まりました。
見えない人/見えにくい人が5名、見える人のサポーターが10名。楽しみにしていたと
いう人と、何かよくわからないけれど参加しましたという人がいました(笑)
ビューとしては、美術館でのアニメや映像作品の鑑賞も積極的にして欲しいという
思いから企画をしました。しかし、アニメの仕組みがわかるか? 出来上がった
アニメ作品の鑑賞をどう実感できるのか? 不安もいっぱい。しかしとにかく挑戦です!
5つのグループに分かれ、自己紹介の後、さっそく講師の山田千愛さんが
作ってくれたサンプルアニメを見ました。
四角の色紙が、画面を左右や上下に移動するもの、くるくる回りながら、形を
変えていくもの、線がかくかくにょきにょき伸びていくものなど、シンプルな
動きのアニメが5つ。全て10〜20秒ぐらいです。
見えない人はサポーターに、どのように色紙や線が動いているのかを、手をとっ
て説明してもらい、アニメーションの簡単な仕組みを理解してもらいました。
今回のアニメ作りの方法はいたって簡単でアナログ。壁に貼り付けた台紙と、
三脚で固定したカメラを使います。動かすもの(色紙やテープなど)を2センチ程
動かしては、1枚写真を撮る、それをひたすら繰り返します。
およそ100回その作業を繰り返すと、20秒のアニメが出来上がります。たくさん撮った
写真をパソコンに取り入れて連続して見ると、動いているように見えるという仕組みです。
そうなんです!かなり地道な作業。その上たった20秒の作品・・・。
みなさんが、あぁ、これは大変なものに参加したと気づいたところで、次は、
音を聞きました。
音からイメージする動きをアニメにしてもらいます。
音の種類は7種類。水滴が落ちる音、がらがらという音、笛のような楽器の音・・
など自由に想像が膨らむ音です。
その音の中から気に入った音を選び、言葉にしたり、思い浮かんだ形や動きを、
立体コピー機を使って描き、触って確かめる作業をしました。
ここでしばらく休憩。休憩中にしっかりイメージを固めて、サポーターと共有し、
いざ本番、撮影開始です。
まずは、素材の形づくりをしました。材料は、色紙、カラーのマスキングテープ、
丸シール、スポンジタイプのシール、ラインテープ、カッティングシート、和紙など。
この作業が大変かなぁ、と思っていましたが、講師の山田さんのうまい誘導で、
悩んでいるグループは特になく、ささっと作業が進み撮影に移りました。
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限られた時間の中で100枚近くの写真を撮るということで、すごい集中力!
すごいエネルギー!! すごいチームワーク!!! 部屋は不思議な熱気に
つつまれていました。
見えない人たちは、監督、もしくは脚本家さながら、自分のイメージを伝えて
指示を出します。動かす作業をしたり、写真を撮っている人もいました。
見えるサポーターからの提案もうまく取り入れていたようです。 |
《 アニメ制作の様子 》 |
白坂さん |
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宮沢さん |
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NAOKI&ウィリーさん |
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光島さん |
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アジーさん |
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できたグループから長めの休憩です。その間に、スタッフが画像をパソコンに
取り入れる作業をしました。
そして、いよいよ上映会と鑑賞。サポーターも撮影段階では、完成は想像するしか
ありません。映像と最初に聞いた音とを、同時に流しました。
作品ごとに、おぉという歓声や、すごい、きれいという声、笑いが生まれました。
もっとシンプルな動きだけになるかと思いましたが、ストーリー性があり、
オチや笑いなどユーモアーのある作品など、それぞれの世界観が、
ぎゅっと20秒に詰め込まれていました。
鑑賞は、まず創ったグループ以外のサポーターさんたち2〜3名から、映像の説明と
感想を話してもらいます。その後、創った本人から作品のコンセプトを説明してもらいます。
さらに、他の見えない人/見えにくい人からも質問をしてもらいました。
どういう手段で創ったのか、自分とは全く違った表現方法を知るのは、とても
刺激になったようです。またやりたい、という声も聞くことができました。
実際にプロセスを経ることで、アニメの面白さが少しは伝わったのではないでしょうか。
これを機に美術館に行ったときも、アニメーション作品に関心を持って
観てもらえたらうれしいです!
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