── 鈴木とも子報告 ──
今年のワークショップはどんなことをやろうかとちょっと悩みました!
それでも、ここ2年ほど続けたえのぐで描くということは、今年もやっぱりやりたい。
というのもビューは触れない絵画でも言葉での鑑賞という方法を通して人と人との
コミュニケーションを大切にしています。
ならば触ってもわからないから…という理由でやらないのではなく、やってみて
何かを感じてもらいたいし、触ってもわからない分、サポーターさんとの連携も密になって、
お互いに引き出し合って作品をつくることができるのではないだろうか。
ペアを組む相手によって描かれる色もその時にしかないものができるはず。
その未知数の可能性が絵を描くひとつの楽しみと思うのです。
今回のワークショップはタイトル通り、「まる・さんかく・しかく」だけで
絵を描くという制限をつけました。
それと「私をえがく」、特に「私の気持ちの揺れ動き」を絵にしてもらおうと思っていました。
絵を描くのも表現のひとつです。
だから、描いている「私」を考えることも重要なこと。
「私の気持ち・感情」を描いてみる、それは目に見えないものだからこそ、
どんな人でも同じ場所に立って絵を描く事、観る事ができる。
もちろん、それを具体的な物に置き換えて描く方法もありますが、
「まる・さんかく・しかく」の制限でより一層、共通のところから
鑑賞し合えるのではないかと。
今までのワークショップでは見られなかった一面をみなさんが出して
くれたらな〜という思いでした。
当日の流れはワークショップ1→描いた絵の鑑賞、ワークショップ2→描いた絵の鑑賞。
ワークショップ1では「まる・さんかく・しかく」の中からどれか
描きたい図形を一つ選び、画用紙に黒の油性ペンで、ただひたすら
図形を描き続けてもらいました。
これは同じ形を描き続けることで自分の気持ちにどんな変化が表れるのか?
そこを期待していました。
制限時間は20分。この20分は短いのか長いのか…
「今、5分経過しました〜」と言うと「えっ?まだ5分しかたってないの!?」
などという声が聞こえてきます。
もう描き上がった様子で手を置いている人には「とにかく20分描き続けてください」と、
お願いしました。
この20分は手を動かし続け、「描く」行為に没頭してもらう時間です。
何かを描こうと意図することなく、無意識に、例えばマラソンランナーのように…。
20分まであと少し…という頃になるほどにみなさんのペースが上がって
きたように思え、「まだ〜?」という言葉もなくなっていったようでした!
次は描いた絵を一枚ずつ前に置き、言葉での鑑賞です。見える人によって絵が語られていきます。
鑑賞した後は作者からのコメントも話してもらいました。
小さなまるを画面一杯に描いていても、一人は煙がもくもく立ちこめているような感じの絵。
もう一人は宇宙遊泳を思い起こしながら描いたということ。
また、「無意識にと言われると抵抗感がある」と言う方もいて、そこは私が強調しすぎたと反省。
ですが、その絵はまさに意図せずに描き続けたようで、大小の少し丸みをおびた
三角形が画面いっぱいに立ち表れていました。
目的を持って描かないということも時には必要かな?と思います。
次のワークショップ2でえのぐです。「まる・さんかく・しかく」の抜き型を用意し、
その抜きの部分に、えのぐで色をさしていきます。 |
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この絵は「私の気持ち」を描くのがひとつの目的。
ですが、漠然としては描きにくいのでテーマを提示しました。
8つの候補の中から各々が描きたいテーマを選びます。
「明と暗」「ちょっと優しいとちょっといじわる」などありましたが…
「良い加減といいかげん」、「ほろ酔いと泥酔」が人気でした!
自分の感情や考え、それ自体を絵にするというのはなかなか難しいことかも知れません。
それでも、「まる・さんかく・しかく」しか形を選べないのでなんとか
描き進めてもらえたようでした。
形は限定ですが、色はいろいろ。「空のような青!」としっかり注文している方も。
鑑賞の時間に作者の意図を聞くと、形によっても色によっても、みなさんが、
割と共通のイメージを持っていることがわかりました。例えば、三角は不安な様子とか、
「泥酔」の状態で紫を使っている方が二人もいたり。
図形を描き重ねることで、心にささってくるもの、立ちふさがるものを
表現されている方も。
また、「最初はどうしたものかと迷って、とりあえず描き始めたら
次第にイメージが広がっていった。」という方がいて、悩みながらも
描いていくことは大切だな〜なんてあらためて思いました。
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「明と暗」 作・宮沢さん |
「良い加減といいかげん」 作・山川さん |
「ほろ酔いと泥酔」 作・白井さん |
「ほろ酔いと泥酔」 作・丸山さん |
「ちょっとやさしい、ちょっと意地悪」 作・幾可ちゃん (飛び入りの小学生) | |
「良い加減といいかげん」 作・白坂さん |
「前進と壁」 作・光島さん |
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今回は、自分を描くということで、「表現しきった!」というすっきり感よりは、
もやもやしたものが残った…という人の方が多いかも知れません。
形のないものを形に表すのは、答えがない答えをさがすようなもの。
でも、そのもやもや感も更なる表現のパワーになるのでは!? と信じています。
最後に、飛び入りで小学生の女の子の参加がありました。
彼女の絵や鑑賞の時の素直な言葉に一同感心。
ちょっとした刺激をもらったように思います。また、機会があれば
参加してほしいな! |