第32回鑑賞ツアー
すべての僕が沸騰するー「村山知義の宇宙」展

 
 


2012年4月30日(月)
場所 京都国立近代美術館
参加者 見えない人・見えにくい人 : 7名
見える人 : 16名
ビュースタッフ : 5名

── 中山登美子報告 ──

鑑賞風景1 今回の展覧会のタイトルは『すべての僕の情熱と思索と小唄と 哲学と絶望と病気とは表現を求めようとして具象されようとして 沸騰する』(村山知義「過ぎゆく表現派」1925年4月)の文中から 引用されたようです。

鑑賞ツアー始まりは学芸員が村山知義についての簡単な解説をされ、 日本のダ?ヴィンチと呼ばれた万能芸術家、村山知義の展覧会は 不可能だと思われていたのに実現できた喜びを語られました。

鑑賞ツアーは7つのグループに分かれ、会場内別々、演劇ポスターから、 コラージュ&版画、童話などからスタートしました。

鑑賞風景5 前衛的な作風が多い中で童画や児童雑誌のイラストはシンプルな線と 印影のつけかたが特徴的でモダンな画風でした。
画中には'Tom'のサインがありTomの童話と言われたそうです。
ちなみにギャラリーTOMは、村山の息子である児童劇作家の村山亜土の 長男が視覚障害者で生まれ育ち、両親は長男の「ぼくたち盲人にも ロダンを見る権利がある」という言葉に突き動かされ、1984年 「視覚障害者のための手で見るギャラリー」として開設した私設美術館です。

今回ツアーでの一つの大きな問題提議は点図の活用方法でした。
見える人は作品と点図の両方を観ながらの対話なので、作品 「サディスティッシュな空間」のように板を重ねたような影をつけ 面白いカーブや切込みがいくつも重なる、曲面立体にも見える作品を 説明するにはかなり難しかったようです。
「コンストルクチオン」は廃材や毛髪などの物体を貼付けた直線的な 作品なので共通に分かりあえ、点図作品の選び方は具象的な絵の方が 向いているとの意見も出ました。
点図を触る1 点図を触る2 点図を触る3
感想会は円座になってのフリートークスタイルに変えたので、 サロンふうの率直な感想が次々と飛び交いました。
発言内容はリズミカルトークを活かしたく、以下それぞれ一言 感想を書き記しました。
感想会
●  ドイツのバウハウスの影響受けた芸術家らしく、バウハウス好きの 私としてはテンション上がった
●  ナジ作品には形態と構成に美しさを感じたが、村山作品には 色彩面でも美しさを感じなかった
●  なんでも創造してしまう第二次世界大戦前の自由さを感じた
●  ヨーロッパのドライさを輸入した形態は日本人のウェットさと相容れないのでは?
●  村山は手足が長く身体のラインがとても綺麗でオシャレ、 大正モダニズムこその流れがあり時代を表現するプロデューサー的役割をされた
●  舞台活動にも関わった村山の作品数が少ないのは舞台は 公演したら終わりって感覚の影響では?
●  若いとき雑誌「テアトロ」を愛読してたので劇団ポスター 「ゴーリキィ」「炎の人」など懐かしい
●  村山作品をあえて美術館で開催する必要性があったのか、 初の展覧会だからいいってものでもなくいいものは時代が淘汰していくのでは?
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