Word of magic that brings luck


 

「おばあさんの贈り物」

 

次の日の朝、目覚めたら、おぱあさんはすでに起きていました。
「おぱあさん、おはようございます」
「おはよう。さあ、こちらで一緒に朝食をとりましょう」
パンとスープをごちそうになりました。その時、おぱあさんがニコニコしながら、
「今日ね、私の息子夫婦がうちにくるのよ。一緒に国内を旅行することになっているの。
私は数日不在するけど、五目市さん、ここにいたかったら、もっと泊まっていってもいいのよ」
一人で泊まってもいいなんて、びっくりです。僕のこと信頼してくれたんだな、と思うと嬉しかったですね。
僕は、実はこの町で個人的に調べたいことがあり、できればもう一日滞在したいなと思っていました。
どうせその日も泊まれるホテルは見つけにくいだろうと思ったものですから、お言葉に甘えてもう一日泊めてもらう事になりました。
僕一人だけで図々しいかなと思いましたけどね。
その後、しぱらくすると、息子さん夫婦がやって来て、「どうも、はじめまして」と挨拶し、握手しました。すると、おばあさんは、「じゃ、私行くからね。あとはよろしくね」と言って出かけようとしました。
その時、「あっ、そうそう、忘れてた、忘れてた」と言って、寝室に戻り、何やら箱を二つ持ってきたんですね。
そして、「これ、あなたにあげるわ」と言って、差し出してきました。
僕は箱を受け取りはしましたが、「いや〜、そんな。おぱあさんにこんなにお世話になりながら、贈り物までもらうわけにはいきませんよ」
と遠慮しながら言いましたら、それまでニコニコしていたおぱあさんが急に真剣な顔をしまして、
「そうですか。それなら、買って下さい」と言うのです。
意外な言葉にギョッとしました。
「お、おいくらですか?」と聞きましたら、「そりゃ、いくらでもいいわよ」
まさしく、一円でも千円でもいい、というような感じなんですね。僕は学生でしたし、そんなにお金があるわけではないのですが、
お世話になりましたので、一万円相当の現地のお金をお渡ししたんです。
一万円相当というと現地の方にとっては、とても大きなお金だと思うんですね。
その時、おばあさんが、どうしてこんなことを言ったのか未だに分からないのですが、
「やっぱりね」と、ポツリと一言いました。
「だけど五目市さん、一つだけ約束してね。あなたの誕生日が来たら、箱を開けてね」
「えっ、どうして誕生日に?」
「開けたら分かるわよ」
つまり、僕の誕生日が来たら、二つの箱のうちの一つを開けてね。そして次の年の誕生目が来たら、もう一つを開けてね、と言うのですね。
その二つの箱は、外観上同じではなく、一つは大きくて白い箱、もう一つは小さくて黒い箱でした。大きい箱は軽く、小さい箱はやや長細くて重量感のある重さでした。玉手箱みたいですね。その時はあまり気になりませんでした。
おばあさんとお別れした後は、もう一泊させて頂いて、その後約3週間、イスラエル国内をあちらこちら旅行して回り、日本へ帰ってきました。
 


 

一つ目の箱」へ続く 

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