Word of magic that brings luck


 

「二つ目の箱」 

 

僕の二十八歳の誕生目が来ました。皆さん、驚くかもしれませんが、あの箱がね、出てきたんですよ。

ヒェ〜。「どこから」というと、送られて来たんです。
「誰から」というと、なんと、彼女からなんですね。
いやぁ、本当に驚きました。だって、同じ黒いラッピングで長細く、その箱を持った重量感も同じなんですね。それは僕しか分からないことなんですが、間違いなくあの箱。もう腰が抜けそうで、震えちゃって、怖くて開けられないんですね。そこで、すぐに彼女の家に電話をかけました。彼女が出ると、「こっ、この箱、いったいどうしたんだ!」
と大声で聞きましたら、彼女はびっくりして、「どうしたもこうしたもないでしょう。今日はあなたの誕生日じゃないの」
「えっ?」
彼女は僕への誕生日プレゼントということで、それを豊橋駅前のデパートで買ったと言いました。あれ、そうなの?と意外に思いましたが、それでも緊張しながらそっとその箱を開けてみました。すると、中にはぺンが入っていたんですね。ギフト用のペン。その時僕は、あの息子さんが言った気になる三つの言葉を思い出しました。
一つは、『恐らく、うちのお袋が一番大事にしていたものでしょうね』
おばあさんと二人で話した時の状況を思い浮かべると、おぱあさんは僕のことを何も聞かないで自分のことぱかりしやべっていましたが、その中で、自分の趣味の話もしたんです。「五日市さん、私の趣味はね、ペン集めなの。このペンはね、ドイツに旅行に行った時に買った物なのよ。ちょっと変わってるでしょ。こっちのものはね、アイルランドにいる友達が送ってくれたものなのよ。かわいらしいでしょう」おぱあさんが大事にしていたものは、『ペン』なんですね。
二つ目。『大丈夫、必ず出てきますよ。もしかすると、あなたの誕生日に』本当に、これがそうなんでしようか。
そして三つ目。『それは、あなたに幸せをもたらすものでしよう』
その黒い箱の中には、彼女からの手紙も入っておりまして、僕のプロポーズに対する返事が書いてありました。

 


運命・盛謝・ありがとう に続く

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