交通死亡事故を無くすため、外出するには資格が必要なポン国がありました。この国では外出資格は国家認定が必要でしたが、規制緩和を行い、その認定は各地に新たに設けられた民間認定機関が行うことになりました。
この法律は5年前に施行され、猶予期間を経て来月から完全実施されます。
ある旧資格保持者が一応念のためにと、旧資格者は改めて認証を受ける必要はあるのかと問い合わせてみると、驚いたことに、もう一度資格検査をしなければならないとの回答がありました。
さあ大変です。ポン国の国民は全国に数カ所しかない認定機関に殺到しています。政府は急遽、認定機関の設置を増やそうとしましたが物理的に対応出来ません。旧資格者は免除して欲しいと言っても「まじめに対応してきた人が一人でもいる限り、法改正はもってのほか」と、聞く耳をもちません。
この法律の対象者は、歩く人、運転する人などが対象ですが、バスの乗客とかクルマの後部座席に座る人には適用されません。法律を作る人は皆、後部座席にふんぞりかえって出勤したり買い物したりするひとです。
世界の国々は、いつものポン国ならではの混乱だと、物笑いの種にしています。 ------------------------------------------------------------
ポン国の騒動をリビングのTVニュースで見ていたコメ国のお母さんが言った。
「へんな国ねえ。外を歩くくらい自由に出来ないのかしら?」
すると、それをそばで聞いた12歳の息子が、
「お母さん、ポン国の政府は立派だよ。国民の命の大事さをよく知っている証拠じゃないか」
お母さんは言いました。
「何を言ってるの! 貴方はもうすぐ13歳でしょ。ティーンエイジャーになるのに五つか六つの子供のようなことを言うんじゃありません。外を歩くのに資格が要るなんて、大きなお世話よ。私はあなたにそんな教育はしてないわ」
息子はうなずいて
「そうだね、分かった。・・・・・・ずいぶん昔になるけど、どこかの国を占領した司令官が、この国はまだ12歳だ、と言ったのを聞いたことがある。ポン国も同じだね」
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