シンメトリーの少年
「はぁっ、はぁっ!!」 荒い呼吸を繰り返しながら、必死で道を駆ける。 ―――立ち止まったら、終わりだ。 連合を抜けたのが、つい一時間ほど前。 脱走兵、ということになるのか。 進む足はそのままに、振り返ると、やはりしつこく追いかけてくる地球軍兵士たち。 「どうせ僕の足には追いつけっこないんだから、いい加減諦めてよ!」 皆を守りたい気持ちから、連合に残ったけれど、オーブに着いた今、もうその必要はなくなった。 今頃は皆、無事で両親との再会を喜んでいる頃だろう。 僕はもう、父さんと母さんには会わない。 ―――ザフトへ、行くのだ。 彼の、許へ。 だから、今は絶対に捕まるわけにはいかない。 一本道、向こうからも追っ手と思しき人影。 「くそっ!!」 挟まれた。 どうやって逃げ延びるかを思案した、その瞬間。 前方の集団の目標が、自分ではないことに気付く。 よく見れば、追っ手を引き連れて走ってくる者が一人。 信じられない気持ちで、前方から迫ってくる人物に目を凝らす。 深紅の服に身を包み、長い軍服の裾を翻して、時折鬱陶しそうに髪をかき上げるその仕草。 「アスラン?!」 そう。それは、少し大人びても変わらない、 ―――アスラン・ザラ、その人だった。 |