シンメトリーの少年
「アス、ラン……?」 信じられない思いで、キラは言葉を繰り返した。 その声に反応して、顔を上げたアスランも、同じように驚いた表情をしていた。 「キ…ラ……?」 しかし、それは一瞬で、状況は再会の余韻に浸る暇など与えてはくれない。 (結局、敵が増えたことに変わりはない。ザフトと地球軍、ここでお互いに潰し合ってくれると助かるんだけどな。) 思うよりも速く、迫り来る人物を薙ぎ払い、蹴り倒す。 やはり、地球軍とザフトの制服の組み合わせは、かなり目立ってしまっていたらしい。 気が付けば周りを囲まれていた。 「話してる暇なんかないみたいだね。」 「あぁ。」 「どういう理由か知らないけど、追いかけてきた人たちは、君の敵?」 「そういうことになる。」 「ふぅん? それじゃ、一時協力、かな。」 「そうだな。話はそれからだ。」 「了解。」 そのまま二人、背中合わせに立ち、銃を構える。 「キラ。そっち、任せたから。」 「……仕方ないね。」 「おかしいな。お前と俺が、一緒に戦うなんて事はありえないと思ってた。」 アスランの自嘲めいた声。 振り返ることはせずにキラは応えた。 「それは僕も同じ、だよ。」 「意外と、あっけないものだな。」 あれだけ悩んでいた日々が嘘のようだと、笑う。 「っ!! アスランッ!!」 「―――わかってる。右から五人、か。」 「左は六人。って、僕の方がノルマ多いわけ?!」 「お前の立つ位置が悪かったな。―――頑張れよ!」 ジャキッ!! 手馴れた動作で銃を引き上げ、相手に向けた。 短く息をついて、キラもそれに倣う。 ―――が。 「―――ちょっと、アスラン! サイレンサーくらい付けてよ!!」 街中で銃声など立てようものなら、また敵が増える。 「悪い悪い。でも、増えたところでどうって事ないだろ?」 悪びれた風もなく、アスランは構えている銃にサイレンサーを取り付けた。 「まあね。とは言っても、別に好んで戦ってるわけじゃないし。敵は少ないに越したことないだろ?」 「そりゃそうだ。道が汚れるのは、まぁ……構わないけど。服が汚れるのは勘弁してほしいな。」 アスランがそう返した時にはもう、敵は残らず地に伏していた。 |