シンメトリーの少年
「これからどうしようか。」 キラは誰にともなく言った。 「つまり、抜け出した後のことは何も考えてなかったと?」 【呆れた】という感情を隠しもしないアスランの声。 「だって君がこっちに来るなんて思わないだろ?」 「それはそうだな。」 「そういうアスランこそどうなのさ? これからどうしたいとか、決まってるわけ?」 キラは口を尖らせてアスランに言った。 どうせ何もマトモな答えなど返らないことは予想済みだった。 ―――が、キラの予想に反してアスランは笑顔で答える。 「もちろん。」 「え……?」 不思議そうな表情をしたキラに、アスランは何の前触れもなく口付けた。 「キラが一緒なら、後は何でも。」 「ばーか。」 それは考えるのを放棄したということで、根本的な解決にはなっていない。 「じゃあ、一緒に暮らそうよ、キラ。 ―――住む場所探して、仕事見つけて、一緒にこの国で暮らそう。」 くすくすとアスランが笑う。 キラもそれにつられるようにして小さく笑みを浮かべた。 「そうだね……。」 たとえ、裏切り者と呼ばれても、そのせいで逃げ回らなくちゃならなくなっても、 互いを殺すことに怯えて、苦しんでいた以前よりは……ずっと良い。 今度こそ大切なものを見失ったりしないように ――― 争いのないこの国で、三年前に途切れたあの日の続きをしよう。 ≫あとがき 結局、たいして黒くありませんね。この二人は。 アスとキラのその後はもちろん、二人の傷や両軍のその後など未消化なものも多いですが、 このお話はいったんここで切ります。 またいつか、このお話の二人を通して、皆様にお会いできる日がくれば嬉しいと思います。 そして、最後になりましたが、ここまで読んでくれたあなたに感謝を込めて。 ―――――ありがとう。 |