天外魔境とは? 其の壱

ここでは、天外魔境2卍MARU(以下、天外とする)をはじめて知る方のための解説をしています。また、すでに天外ファンの方にとってもマニアックな情報を提供出来ればと思います。

まずそば団子について

これから以下の事をのたまう「そば団子」は、テレビゲームとどのような関わりを持って来たか簡単に説明しておきます。
まず、私はゲーム草創期(?)ファミコン世代の人間です。ドット絵のゲームから1億ポリゴンのCGに至るまでの歴史を見てきました。所有するハードは17種以上(図1参照)、ソフトは350本を超えます(←あほ?)。ハードの数からするとソフトが少ないのですが、ジャンルにこだわらず色々なゲームを手広くやってきたつもりです。そのそば団子がはっきり言います。天外2が一番おもしろかったと。

所有ハード
(図1)


RPGの金字塔

 天外魔境とは一言でいえば超ド級RPGです。もはやRPGと言う枠に入りきらず、新たに天外と言うジャンルを打ち立てた、なんて某雑誌では言ってました。  その世界観は独特です。日本を西洋に劣らぬファンタジーの国として、日本各地の伝説や神話をちりばめ、西洋から見た「間違った日本への認識」もそのままの奇想天外な世界「ジパング」が舞台です。濃厚なストーリーを基盤に、その中で繰り広げられる人間模様は、まさに笑いあり、涙あり!  テレビゲームとして見れば、それ以前のものと比べて(その後のモノと比べても)、明らかに一線を画しており、当時「ドラクエ」命であった私は、それまでのゲーム人生すべてを否定しなければなりませんでした。本当に情けなかったですね。正直言ってちょっと泣いた!その時のショックは言葉では言い表せません。なにせそれまで一番おもしろいと思っていた「ドククエ」なんて天外2と比べれば、まさに「月とスッポン」!ものが違いすぎます。

圧倒的なボリューム

 イベントの質と量は他の追従を許さず、それまでのRPGに欠けていた本物の「演出」というものを見せつけられました。それまでのRPGになかった「無駄なセリフ」、それまでのRPGになかった「自分勝手な仲間」、それまでのRPGになかった(というより当時PCエンジンでしか出来なかった)CD-ROMを活かした「音楽」、それまでのRPGを凌駕するボリューム━セリフ数10,000、登場人物3,000、マップ20,000画面、町・洞窟250、アイテム400種類、モンスター400種、BGM80曲(宮崎アニメでお馴染みの久石譲氏参加)、アニメ原画2,000枚、乗り物30種類(内、「鋼鉄城」は当時のゲームに登場する乗り物の中では最大の大きさだった)、データ容量は130メガ(その後発売されたFF4が16メガとか言ってた頃)━なにをとっても超RPGでした。もちろんボリュームがあればいいというものではありませんが、天外はこれだけ広大な世界を隅々まで歩いても60〜80時間でテンポよく快適にクリア出来るように構成されています。そこが一番凄いのです。映画「タイタニック」で最も評価出来る部分は、3時間以上あるにも関わらず、それを感じさせない構成のうまさであると思います。天外も同じ。細かく言うと、天外はかなり甘く作ってあります。というのは、既存のRPGと同じ設定だと終わらないRPGになってしまうからだそうです。具体的には、「歩く速さ」・「レベルアップの速度」が一般的なRPGの約2倍になっています。そして、通常の戦闘スピードがとてつもなく速い!こっちの力さえ強ければ、ザコ戦は数秒で終わらせる事ができます。かと言って戦闘が味気ないかと言うと、とんでもない。術・技・奥義を駆使することで様々な戦法がとれます。これらの点は、ストレスがなく奥の深い戦闘として多くの方に評価されています。
また、全滅しても宿に戻されるだけで「最後にセーブしたところから」なんてことにはならないし、「お金が半分」になったりもしません。あとレベルアップ時に「体(HP)」・「技(MP)」が全快するようになっています。甘い設定ですよね。こうやって考えてみるとそうなんですが、実際はそんな「甘さ」は感じず、とにかく快適にプレイできます。そう出来てます。
これらのことから考えても、既存のRPGがいかに無駄なことに時間を浪費させていたかがわかります。

PCエンジンと言うハード

PCエンジンは、NECの「コア構想」の、まさしくコアとして開発されたハードでした。PCエンジンを家庭の中核に、そこから通信・遊び・教育・生活などのあらゆる方面へ発展性をもたせようとしたものです。詳しくは知りませんが、要するに、今SONYがPSでやってる事でしょう。このコア構想は時代を先読みしたすばらしいものだったのですが、先読みしすぎてました。時代がついてこれなかったのです。結局コア構想は失敗に終っています。それにしても、このコア構想のおかげで、PCエンジンの周辺機は他に類を見ないほど充実(?)していました。充実しすぎで、ややこしくて仕様が無かったですけど。

 いわゆる次世代機以前のゲーム中のイベントと言うものは、文字のセリフと画面のキャラが少々動く、「人形劇」と言われるものがほとんどで、視覚的な演出効果は非常に弱いものでした。それはPCエンジン以外の当時のハードでは性能上しかたがなかったとも言えます。しかし、PCエンジンはまだファミコンしかなかった時(セガもあったけど)から、すでにCDROMを採用しており、当然のようにしゃべり、アニメしていました。FCとPCEを比べれば、どう見てもPCEの方が「スゴイ」、「おもしろそう」という印象を与えたはずです。でもPCエンジンは売れませんでした。実際、私も当時は見向きもしませんでした。なぜでしょう?まず、ファミコンが十分おもしろかったと言うのはあります。私もその頃、友達の家で一度PCエンジンを見たことがありました。しゃべっているのを見てびっくりしました(確かドラスレだった)。あまりにもファミコンと違いすぎて、ゲームなのか何なのかも分からなかったですが。そもそも、CDがゲームっていうのが理解できなかったですね。音楽CDもまだ主流でなかった頃の話ですから。
PCエンジンは大人のゲーム機という印象が強く、ソフトも小学生くらいの子供向きではなかったと思います。パソコンの、「ゲームができる」という機能だけを取り出したような機械でした。(パソコンでもまだCDROMではなかったけど)もちろん、パソコンも現在のように一般に受け入れられる存在ではありませんでした。だいたい本体の値段も、子供のおもちゃと言うには高すぎました。DUOって6万とかでしたよね。その後、現在に至ってもそんな高いハードはないです。結局PCエンジンはファミコンとの市場争いに完敗し、その後も大差をつけられたまま終わってしまいました。(後継機のFXはもっと悲惨な運命をたどってしまった。)もっと悔しいのは、結局最後までPCエンジンはギャルゲー専用機だと思われていた事です。だからPCエンジンでいくらおもしろいゲームが出ても、PCEファンの声は象の足下で騒ぐアリの様に無視されてきました。天外以外でも、PCEのゲームは基本的に演出が良かったので、良いゲームはたくさんあるのですが。業界からは正当な評価を受ることもありましたが。特に全国チェーンのファミコンショップ「わんぱくこぞう」さんは天外Uに対して深い理解と評価をして下いました。「個人的にはDQ・FF以上だと思っている。」とおしゃっていました。(えらい!)GC、PS2版のリメイク発売についても、早速号外を発行するという大技を繰出してくれました(すごい会社だ)。  人間でもはやく登場しすぎた天才は世間には認められず、不幸であることがよくあります。それでも死んだあとから評価されればまだましだが・・・。PCエンジンはどうなるのやら。

制作者について

天外の生みの親は広井王子氏です。今ではすっかりサクラ大戦(SS,DC)で有名になってしまいました。天外魔境3の制作は諸々の事情でストップしてしまっていますが(※発売決定前に書いてた文章です)、彼の原点は天外にあるハズです。天外3の制作が発表されてから、いつまでたっても発売されないので、一時期彼を恨んだこともあります。しかし、その後問題の複雑さを知り、彼自身も辛い思いをしているのではないかと思うようにしています。すべては良いものに対して正当な評価を与える事が出来ない大衆が悪いのです。が、こんなことは大声では言えない・・・。

天外関係者でもう一人忘れてはならないのが、桝田省治氏です。天外2では監督・脚本を担当されていましたが、この人なくして天外2はあり得なかったでしょう。が、どうも本人は天外2をそれほど気に入っていないような気がします。本人曰く、天外は王道だからだと。天外はオーソドックスなRPGであり、クリエイターからするとシステム的におもしろくないみたいです(天外がおもしろくないという意味ではない)。実際桝田氏は自分で会社をつくって以来、風変わりなゲームをつくり続けています。(代表作:ネクストキング、リンダキューブ(SCD,PS)、俺の屍を越えてゆけ、暴れん坊プリンセス等)保守的なゲームの多い昨今、すばらしい姿勢であるとは思います。でも天外ほど完成度の高いゲームは作られていません。システムがいかに個性的でも、結局完成度が高くなければ意味はないのです。

そしてあまり紹介されてこなかったようですが、天外2で演出を担当した事になっている岩崎啓眞氏。もしこの人が本当に「演出」を担当しているなら、天外をおもしろくした、かなり重要な人物の一人だと考えられます。この業界の「演出」ってなにをするのか具体的には知らないので、思っているのと違うかもしれませんが。ちなみに岩崎氏は「イース1・2」を制作した人。「イース1・2」はパソコンから各ハードに、現在も移植され続ける不朽の名作(という事になっている。後の文章でも触れますが、イースは間違った高評価を受けているゲームの代表だと思います。)。特に岩崎氏らの制作したPCエンジン版は過去現在を通じて最高傑作となっています。

天外魔境その他のシリーズ

間違いのないように言っておきたいのが、PCE以外で出た「外伝天外」についてです。SSの「第四の黙示録」とSFの「ZERO」ですが、あれらは天外の看板を背負うにはそれぞれ問題のある作品でした。私以外の多くの「元から天外ファン」もそう思っていることと思われます。「ZERO」は単にゲームとしてレベルが低すぎます。「第四」はそこそこおもしろかったのですが、少し天外本来の魅力とずれているような気がします。どちらも到底天外の名を冠する事は出来ない作品です。はっきり言えませんが、「天外の大事なもの」が抜けている感じがします。あれを天外と思って欲しくないです。せっかくサターン、スーファミと言う大舞台に出たのに「ああ、PCエンジンで面白いって言われてる天外ってこんなもんか。」と思われてしまいました。実際、天外2はおもしろいって訴えても「天外はZERO(or第四)やったけどおもしろくなかった。」と言われてしまいます。えらい迷惑です。当然ですが、これから天外をやってみようと言う方は、入手困難でも絶対にPCエンジンの天外魔境2をやらなくてはなりません。

思い出したのでついでに書いておきますが、「第四」が発売される時、ファミ通にレビューが載った。「僕は天外シリーズははじめてだけど・・・」とほざいているレビュアーがいました。まあ、みんなそうなんだろうけど・・・ゲーム業界にいる資格がないよっ!(ちなみにそれでも「第四」は一応殿堂入りしていた)。もうひとつ、ついでに書いておくと、ファミ通のレビュアーのなかでもモリガン長田さんは、レビュアーを引退する際、今までで一番面白かったゲーム3つのうち1つに天外2を挙げていたのではなまるをあげます。

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