伊東静雄「反響」
凝視と陶醉


    孔雀の悲しみ 動物園にて

 
 蝶はわが睡眠の周圍を舞ふ
 
 くるはしく旋囘の輪はちぢまり音もなく
 
 はや清涼劑をわれはねがはず
 
 深く約せしこと有れば
 

 
 かくて衣光りわれは睡りつつ歩む
 
 散らばれる反射をくぐり……
 
 玻璃なる空はみづから堪へずして
 
 聽け! われを呼ぶ




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