北原白秋
 

「邪宗門」より

  
 よひやみ




 
 うらわかきうたびとのきみ、
 
 よひやみのうれひきみにも
       し
 ほの沁むや、青みやつれて
 
 木のもとに、みればをみなも。
 

    うら
 な怨みそ。われはもくせい、
 
 ほのかなる花のさだめに、
  ま み
 目見しらす、うすらなやめば
 
 あまき香もつゆにしめりぬ。
 

 
 さあれ、きみ、こひのうれひに
 
 よひのくち、それもひととき、
 
 かなしみてあらばありなむ、
 
 われもまた。――月はのぼれり。



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