北原白秋
「思ひ出」より たそがれどき たそがれどきはけうとやな、 くぐつまはし 傀儡師の手に踊る おいらん なま 華魁の首生じろく、 かつくかつくと眼が動く‥‥ たそがれどきはけうとやな、 がた 潟に堕した黒猫の 足音もなく帰るころ、 ひとだま や 人霊もゆく、家の上を。 たそがれどきはけうとやな、 しび 馬に載せたる鮪の腹 き 薄く光つて滅え去れば、 店の時計がチンと鳴る。 たそがれどきはけうとやな、 日さえ暮るれば、そつと来て いきぎもとり 生肝取の青き眼が 泣く児欲しやと戸を覗く‥‥ たそがれどきはけうとやな。 |
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