藍色の蟇
美の遊行者
そのむかし、わたしの心にさわいだ野獣の嵐が、
初夏の日にひややかによみがへつてきた。
たね
すべての空想のあたらしい核をもとめようとして
をんなどり
南洋のながい髪をたれた女鳥のやうに、
いちづ
いたましいほどに狂ひみだれたそのときの一途の心が
いまもまた、このおだやかな遊惰の日に法服をきた昔の知り人のやうにやつてきた。
なんといふあてもない寂しさだらう。
白磁の皿にもられたこのみのやうに人を魅する冷たい哀愁がながれでる。
わたしはまことに美の遊行者であつた。
め
苗床のなかにめぐむ憂ひの芽望みの芽、
わたしのゆくみちには常にかなしい雨がふる。
|