大手拓次
『藍色の蟇』

藍色の蟇

  
  


 
 ものはものを呼んでよろこび、
                               おほやう
 さみしい秋の黄色い葉はひろい大様な胸にねむる。
 
 風もあるし、旅人もあるし、
 
 しづんでゆく若い心はほのかな化粧づかれに遠い国をおもふ。
 
 ちひさな傷のあるわたしの手は
 
 よろけながらに白い狼をおひかける。
 
 ああ 秋よ、
 
 秋はつめたい霧の火をまきちらす。