大手拓次
『藍色の蟇』

湿気の子馬

  
  法性のみち


 
 わたしはきものをぬぎ、
 
 じゆばんをぬいで、
 
 りんごの実のやうなはだかになつて、
           ほふしやう
 ひたすらに法性のみちをもとめる。
 
 わたしをわらふあざけりのこゑ、
 
 わたしをわらふそしりのこゑ、
 
 それはみなてる日にむされたうじむしのこゑである。
 
 わたしのからだはほがらかにあけぼのへはしる。
 
 わたしのあるいてゆく路のくさは
 
 ひとつひとつをとめとなり、
 
 手をのべてはわたしの足をだき、
 
 唇をだしてはわたしの膝をなめる。
 
 すずしくさびしい野辺のくさは、
 
 うつくしいをとめとなつて豊麗なからだをわたしのまへにさしのべる。
 
 わたしの青春はけものとなつてもえる。