大手拓次
『藍色の蟇』

湿気の子馬

  
  母韻の秋


 
 ながれるものはさり、
 
 ひびくものはうつり、
 
 ささやきとねむりとの大きな花たばのほとりに
 
 しろ毛のうさぎのやうにおどおどとうづくまり、
 
 宝石のやうにきらめく眼をみはつて
 
 わたしはかぎりなく大空のとびらをたたく。