大手拓次
『藍色の蟇』

香料の顔寄せ

  
  ベルガモツトの香料


 
 ほろにがい苦痛の滋味をあたへる愛恋、
 
 とびらはそこに閉ざされ、
 
 わたしの歩みをしぶりがちにさせる。
               とげ
 はりねずみの刺に咲く美貌の花のやうに
 
 恋情のうろこをほろほろとこぼしながら、
 
 かぎりなくあまい危ふさのなまめかしさを強ひてくる。