大手拓次
『藍色の蟇』
風のなかに巣をくふ小鳥
西蔵のちひさな鐘
むらさきのつばきの花をぬりこめて、
かの宗門のよはひのみぞにはなやかなともしびをかかげ、
憂愁のやせさらぼへた馬の背にうたたねする鐘よ、
そのほのぐらい銀色のつめたさは
さやさやとうすじろく、うすあをく、
らんき とげ
嵐気にかくされたその風貌の刺のなまなましさ。
鐘は僧形のあしのうらに疑問のいぼをうゑ、
くまどりをおしせまり、
笹の葉のとぐろをまいて、
うを
わかれてもわかれてもつきせぬきづなの魚を生かす。
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