大手拓次
『藍色の蟇』

風のなかに巣をくふ小鳥

  
  四月の日


 
 日は照る、
 
 日は照る、
 
 四月の日はほのほのむれのやうに
 
 はてしなく大空のむなしさのなかに
 
 みなぎりあふれてゐます。
 
 花は熱気にのぼせて、
 
 うはごとを言ひます。
                       なんぷう
 傘のやうに日のゆれる軟風はたちはだかり、
 
とびあがる光の槍をむかへます。
 
日は照る、
 
日は照る、
          こんじやう
あらあらしく紺青の布をさいて、
 
らんまんと日は照りつづけます。