大手拓次
『藍色の蟇』

風のなかに巣をくふ小鳥

  
  月をあさる花


                                       みづがひ
 そのこゑはなめらかな砂のうへをはしる水貝のささやき、
 
 したたるものはまだらのかげをつくつてけぶりたち、
 
 はなびらをはがしてなげうち、
 
 身をそしり、
                  ゆびわ
 ほのじろくあへぐ指環のなかに
 
 かすみゆく月をとらへようとする。
 
 ひらいてゆけよ、
 
 ひとり ものかげにくちびるをぬらす花よ。