萩原朔太郎
『月に吠える』より

  
  山居


 
八月は祈祷、
 
魚鳥遠くに消え去り、
 
桔梗いろおとろへ、
 
しだいにおとろへ、
 
わが心いたくおとろへ、
 
悲しみ樹蔭をいでず、
 
手に聖書は銀となる。