萩原朔太郎
『月に吠える』より

  
  蛙の死


 
蛙が殺された、
 
子供がまるくなつて手をあげた、
 
みんないつしよに、
 
かわゆらしい、
 
血だらけの手をあげた、
 
月が出た、
 
丘の上に人が立つてゐる。
 
帽子の下に顔がある。

幼年思慕篇