石川啄木

心の姿の研究 四

  
  柳の葉

 
 電車の窓から入つて来て、
  ひざ         やなぎ
 膝にとまつた柳の葉――

  こ こ     ちょうらく
 此処にも凋落がある。
  しか
 然り。この女も
          みち
 定まつた路を歩いて来たのだ――

たびかばん ひざ
 旅鞄を膝に載せて、
                           なまめ 
 やつれた、悲しげな、しかし艶かしい、
  いねむり       となり 
 居睡を初める隣席の女。
                 ど こ    ゆ 
 お前はこれから何処へ行く?




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