立原道造「暁と夕の詩」
VI
失なはれた夜に
灼けた瞳が 灼けてゐた
ひとみ
青い眸でも 茶色の瞳でも
なかつた きらきらしては
僕の心を つきさした
泣かさうとでもいふやうに
しかし 泣かしはしなかつた
きらきら 僕を撫でてゐた
な
甘つたれた僕の心を嘗めてゐた
灼けた瞳は 動かなかつた
青い眸でも 茶色の瞳でも
あるかのやうに いつまでも
灼けた瞳は しづかであつた!
かをり
太陽や香のいい草のことなど忘れてしまひ
ただかなしげに きらきら きらきら 灼けてゐた
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