島崎藤村
「若菜集」より
春の歌
たれかおもはん鶯の
涙もこほる冬の日に
若き命は春の夜の
ま
花にうつろふ夢の間と
うまざけ
あゝよしさらば美酒に
うたひあかさん春の夜を
梅のにほひにめぐりあふ
春を思へばひとしれず
からくれなゐのかほばせに
流れてあつきなみだかな
あゝよしさらば花影に
うたひあかさん春の夜を
わがみひとつもわすられて
おもひわづらふこゝろだに
春のすがたをとめくれば
たもとにゝほふ梅の花
あゝよしさらば琴の音に
うたひあかさん春の夜を
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