島崎藤村
「若菜集」より
昼の夢
花橘の袖の香の
みめうるはしきをとめごは
まひる
真昼に夢を見てしより
さめて忘るゝ夜のならひ
まひる
白日の夢のなぞもかく
忘れがたくはありけるものか
ゆめと知りせばなまなかに
さめざらましを世に出でゝ
うらわかぐさのうらわかみ
何をか夢の名残ぞと
問はゞ答へん目さめては
熱き涙のかわく間もなし
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