島崎藤村

「若菜集」より


  
  狐のわざ


 
庭にかくるゝ小狐の
            よる
人なきときに夜いでゝ
 
秋の葡萄の樹の陰に
 
しのびてぬすむつゆのふさ

 
恋は狐にあらねども
 
君は葡萄にあらねども
 
人しれずこそ忍びいで
 
君をぬすめる吾心



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