中原中也「在りし日の歌」
春の日の歌
ながれ あは けうしう
流よ、淡き 嬌羞よ、
ながれて ゆくか 空の国?
心も とほく 散らかりて、
ヱヂプト煙草 たちまよふ。
流よ、冷たき 憂ひ秘め、
ながれて ゆくか 麓までも?
まだみぬ 顔の 不可思議の
のんど
咽喉の みえる あたりまで……
午睡の 夢の ふくよかに、
野原の 空の 空のうへ?
な
うわあ うわあと 涕くなるか
黄色い 納屋や、白の倉、
かなた
水車の みえる 彼方まで、
ながれ ながれて ゆくなるか?
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