中原中也「在りし日の歌」
夏の夜に覚めてみた夢
眠らうとして目をば閉ぢると
真ッ暗なグランドの上に
その日昼みた野球のナインの
ユニホームばかりほのかに白く――
ナインは各々守備位置にあり
ずる
狡さうなピッチャは相も変らず
お調子者のセカンドは
相も変らぬお調子ぶりの
さて
扨、待つてゐるヒットは出なく
やれやれと思つてゐると
ことごと
ナインも打者も 悉 く消え
人ッ子一人ゐはしないグランドは
たちま ひ る
忽ち暑い真昼のグランド
めぐ なみき
グランド繞るポプラ竝木は
蒼々として葉をひるがへし
ひときはつづく蝉しぐれ
ね
やれやれと思つてゐるうち……眠た
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