山村暮鳥
「風は草木にささやいた」



  
 彼等は善い友達である


 
結氷したやうな冬の空
 
その下で渦捲く烈風
 
山山は雪でまつ白である
 
昼でもほの暗い
 
ひろびろとした北国の寒田に
 
馬と人と小さく働いてゐる
 
はるかに遠く此処では
 
馬と人と
 
なんといふ睦じさだ
      たがひ
そして相互に助けあつて生きてゐる
 
寒田は犂きかへされる
 
犂きかへされた刈株の田の面はあたらしく黒黒と
 
その上に鴉が四羽五羽
 
どこからきたのか
 
此のむごたらしい景色の中にまひおりて
 
鴉等は鳴きもせず
 
けふばかりは善い友達となつて働いてゐる
 
なにを求めて馬や人といつしよになつてゐるのか
 
それが此処からはつきりみえる
 
田の畦の枯れたやうな木本までが苦痛を共にしてゐるやうだ