山村暮鳥
「風は草木にささやいた」



  
 ランプ


 
野中にさみしい一けん家
 
あたりはもう薄暗く
 
つめたく
 
はるかに遠く
 
ぽつちりとランプをつけた
 
ぽつちりと点じたランプ
 
ああ
 
何といふ真実なことだ
 
これだ
 
これだ
 
これは人間をまじめにする
 
わたしは一本の枯木のやうだ
 
一本の枯木のやうにこの烈風の中につつ立つて
                おのづか
ランプにむかへば 自 ら合さる手と手
 
其処にも人間がすんでゐるのだ
 
ああ何もかもくるしみからくる
 
ともすれば此の風で
 
ランプはきえさうになる
 
そうすると
 
私もランプと消えさうになる
 
かうして力を一つにしながら
 
ランプも私もおたがひに独りぼつちだ