山村暮鳥
「風は草木にささやいた」



  
 ひとりごと


 
一日中のはげしい労働によつて
                   からだ
ぐつたりとつかれた体躯
 け さ 
今朝みると
 
むくむくと肥え太り
 
それがなみなみと力を漲らしてゐる
 
そしてあふれるばかりになつてゐる
 
それは大きな水槽が綺麗な水を一ばいたたへてゐるやうだ
 
たらたらと水槽には筧の水がしたたるのだが
 
おお此の肉体の力はよ
                      ど こ
それは眠つてゐるまに何処から来たか
 
力はあふれる水のやうなものだ
 
肉体から充ちあふれさうな此の力
                         かなた
それをまたけふもけふとて彼方で頻りに待つてゐる
 
あの丘つづきの穀物畠
 
あの色づいて波立てる麦の畠をおもへ
 
此の新しい日のひかり
 
新しくあれ
 
ゆたかな力のよろこびに生きろ